聖路加国際病院

St Luke's International Hospital

泌尿器科

泌尿器科のお知らせ

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人工尿道括約筋(AMS800)による尿失禁手術が保険適用となりました

男性における腹圧性尿失禁はよくみかける病態であり、生活の質に大きな影響を及ぼします。動作時や咳、くしゃみなど腹圧がかかった時に尿が漏れるということは、尿とりパッドやオムツの必要枚数が増えるばかりでなく、精神的なストレスともなってきます。
男性における腹圧性尿失禁は最も一般的には前立腺手術後に生じる可能性があります。欧米からの研究報告によれば、前立腺全摘除手術を受けられた患者さんの手術後の尿失禁発生率は5-48%で、その術後尿失禁の症状が重度のために、人工尿道括約筋の植え込み術を含む外科手術治療を受けられる患者さんは0.3-9%に及ぶとされています。実際に前立腺全摘除手術後の重度の尿失禁が、この人工尿道括約筋の植え込み手術の最も一般的な適応となっております。人工尿道括約筋植え込み手術後の社会的尿禁制(1日に使用する尿とりパッドやオムツが1枚かそれ以下ですむ状態)は73-88%、満足度も非常に高く73-91%と報告されています。人工尿道括約筋植え込み手術は、欧米を中心に増え続けています[1]

[1] Matsushita K, Chughtai BI, Maschino AC, Lee RK, Sandhu JS. International variation in artificial urinary sphincter use. Urology. 2012;80: 667-72.

前立腺全摘除後尿失禁に対する手術適応と時期

現在前立腺癌に対するロボット手術の普及により、術後尿失禁の発生頻度は減少してきておりますが、それでもなお前立腺全摘除術後の尿失禁は多くの患者さんが経験いたします。手術後3か月までに急速に改善し、多くの患者さんは手術後1年までに改善いたします。既に記載したように数%の患者さんは手術後1年経過しても重度の尿失禁に悩まされます。内服薬による治療、骨盤底筋群体操を行っても続いている重度の尿失禁がこの人工尿道括約筋の植え込み術の適応となってきます。前立腺全摘除術後は、時に尿道吻合部の硬化症、狭窄をきたすことがあり、それが尿失禁の原因となることもありますので、人工尿道括約筋植え込み術前には内視鏡を用いて尿道の狭窄の有無を確認いたします。

人工尿道括約筋植え込み術

人工尿道括約筋植え込み術

人工尿道括約筋は、カフ、圧力調整バルーン、及びコントロールポンプとコネクターの4つの主要部品から構成されています。これらはチューブにより連結され、滅菌された圧媒液で満たされています。カフは本来の正常な括約筋のような働きをし、膀胱内に尿を留めておくために尿道を穏やかに締めつめます。
入院期間は4泊5日で手術時間は2時間程度です。手術翌日には歩行ができ、術後2日目に尿道カテーテルを抜去します。手術後、人工尿道括約筋は植え込みをしたまま組織になじませる必要がありますので、約2か月間は作動させないで置いておきます。そのため尿道カテーテル抜去後も尿失禁はこれまでどおりおこりますので、引き続きパッドやオムツなどの対応をしていただきます。手術後約2か月したところで1泊2日の入院をしていただき、人工尿道括約筋を稼働させ、手技習得のための指導も行います。

合併症の可能性と対処方法

  1. 創部の感染

    尿道周囲を含め体内に異物を植え込むために、他のインプラント手術同様に感染の可能性があります。予防的に抗生剤を使用しても、報告では約5%に感染が起こることがあります。症状は局所の痛みや発熱などが起こります。このような感染徴候が見られた場合は可能な限り、抗生剤など保存的に経過をみますが、それで軽快しない場合は、人工尿道括約筋を摘出せざるを得ないこともあることをご理解ください。
  2. 尿道のびらん

    非常に稀ですが、カフにより尿道の圧迫が強いと尿道に炎症がおこり、びらんを生ずることがあります。
  3. 機械のトラブル

    1973年の導入以来、改良を重ねておりますので、現在ではその可能性は極めて低くなっております。
  4. 長期成績

    日本でのまとまった長期成績はまだございませんが、海外では長期に人工尿道括約筋を使用しても良好な経過を得ているという報告がみられます。

当科でも人工尿道括約筋の植え込み術を経験された患者さんからは高い満足度が得られていると考えております。今まで外出時にたくさんのパッドやオムツを持ち運ばなくてはいけなかったのが、1日1枚もしくはパッドが必要ではなくなったという声をよくお聞きします。

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