聖路加国際病院

St Luke's International Hospital

整形外科

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股関節唇損傷の診断と治療

股関節唇は、骨盤側の寛骨臼の辺縁を取り巻く柔らかい線維軟骨組織で、リング状のゴムパッキンのように大腿骨頭を包み込んでいる部分です。大腿骨頭を安定化させ、衝撃吸収の役割を担っています。 関節唇には神経が存在し、損傷を受けると痛みを生じることがあります。 関節唇損傷を生じると骨頭が安定しなくなり、次第に軟骨が破壊され、変形性股関節症へ移行すると考えられています。

股関節唇損傷の症状

股関節唇を損傷すると、脚を動かす動作で痛みが走ったり、引っ掛かり感を感じたりします。日常生活ではあぐらをかくような姿勢や、股関節を深く曲げて内側へ脚を組む時に痛みや違和感を生じることがあります。靴下を履く、爪を切るなどの股関節を深く曲げる動作、車の乗り降りや椅子から立ち上がる際に痛みや異常感覚を生じる場合には、股関節唇損傷の可能性があります。痛みの程度は鈍痛から激痛まで様々です。

股関節唇損傷の診断

股関節唇損傷の診断は、(1)詳細な問診と(2)医師の診察(可動域検査、パトリックテスト、インピンジメントテストなど)、(3) MRI(エム・アール・アイ:核磁気共鳴画像)検査、(4)股関節内キシロカインテスト(股関節内に局所麻酔剤を注入して、疼痛が消失・軽減するか)などにより行われます。

  • MRI検査では、通常の撮像法に加え股関節唇を描出できる特殊な撮影法を行います。
  • MRI検査は関節唇だけでなく、筋、腱、骨、軟骨、靭帯などの他の組織も同時に評価することが出来ます。

また、もともと股関節に形の異常があり、それが原因となって股関節唇損傷が起こることも多いため、股関節の形も単純X線(レントゲン)検査で評価します。例えば、骨盤側の屋根が浅い「寛骨臼(かんこつきゅう)形成不全」や、股関節を深く曲げたときに骨同士がぶつかる 「股関節インピンジメント(FAI)」などです。

寛骨臼形成不全と股関節唇損傷

寛骨臼形成不全では、寛骨臼側の屋根が浅い分、股関節唇に負担がかかります。股 関節唇は、柔らかい軟骨組織であり、形態異常に伴う繰り返しのストレスで損傷リスクが高くなります。

股関節インピンジメント(FAI)と股関節唇損傷

FAIとは、Femoroacetabular impingement の略語で、股関節の臼蓋側と大腿骨側の衝突、骨と骨のぶつかりを意味します。大腿骨頭の頚部のくびれが小さかったり、臼蓋の骨のでっぱりがあったり、軽度な骨形態の異常が原因で、運動時に骨同士の衝突を起こし、股関節唇損傷を生じることがあります。

股関節唇損傷の治療

保存治療

股関節唇損傷では、まず保存治療を行います。

股関節唇損傷の方は、股関節が深く曲がるような動作やあぐらをかくように股関節を開く動作を避けることが大切です。しゃがみ込みや、車の乗り降り、床から立ち上がるときなどに手を添えて、関節に少しでも力がかからないようにすることが必要です。日常生活で痛くなる動作を覚え、それを避ける生活を送ることを心がけて頂きます。リハビリとして、股関節の周りや体幹の筋力トレーニングや骨盤の柔軟性を得ることも役立ちます。できるだけ関節唇への負担を生じさせないような股関節の動かし方、身体の使い方を理解し、日々の生活の中から実践することが痛みの管理、予防にも繋がります。

また、股関節内の炎症を軽減する目的で股関節内に局所麻酔やステロイド注射を行います。当院では超音波を用いて股関節内注射を行っています。

初期の股関節損傷では、このような日常生活での工夫やリハビリ、注射でよくなる方がほとんどです。数カ月たっても症状が改善しない場合は、一歩進んだ治療として手術を考えた方がよいかもしれません。

手術治療

股関節唇損傷の手術治療の1つに股関節鏡視下術があります。 股関節の外側に小さい穴を2~3カ所作り、内視鏡を入れ、損傷部位を切除、あるいは縫合する手術です。当院では可能な限り股関節唇を温存する手術(股関節唇縫合手術)を行っています。縫合できない場合は、状況に応じて腸脛靭帯での再建術を行います。比較的高度な手術の技量が必要とされ、国内ではまだあまり普及していないのが実情ですが、当院では十分な経験を積んでいる整形外科専門医が担当しています。

股関節鏡手術の手術時間

股関節の中の治療方法によって時間は変わりますが、関節内のデブリドマン(掃除)や遊離体摘出などの単純な手術であれば1時間程度、股関節唇の縫合などの複雑な手術では2~3時間が目安です。ただし手術する前に麻酔をかけて手術を準備する時間と、手術終了後に麻酔が覚めるまでの時間などもあり、実際お部屋に戻る時間は+1~2時間程度かかります。

股関節鏡手術の入院期間

単純な処置であれば約3日の入院で十分ですが、股関節唇の縫合などを行った場合は手術後のリハビリテーションがとても重要であり、約1週間の入院をお勧めしています。

股関節鏡手術の麻酔方法

下肢を引っ張りながら手術を行うため、十分な筋弛緩が必要であり、原則として全身麻酔で行います。

股関節鏡手術後のリハビリ

手術翌日から車いすや松葉杖での移動ができます。単純な処置であれば1本の杖での退院、関節唇の縫合などを行った場合には2本の杖での退院となります。

股関節鏡手術後のリハビリテーションは手術と同じくらい重要です。当院では退院後も週1回程度の外来リハビリテーションを行います。来院しない日は自宅でのリハビリテーションを行っていただくために、入院期間中に十分な指導を行っています。

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