聖路加国際病院

St Luke's International Hospital

腎臓移植


聖路加国際病院の腎移植の特徴

聖路加国際病院の『腎臓移植』は、「腎臓内科」「泌尿器科」によって行われます。
腎臓病クリニック

腎臓移植チーム

日本の腎臓移植件数はアメリカの約1/10と数こそ少ないですが、腎移植の成績自体は移植大国のアメリカと遜色なく、腎臓移植は日本でも確立した医療です。
日本では移植手術もその後の外来フォローも通常は外科が行うのに対して、アメリカでは手術は外科、それ以外の術前評価や術後の外来フォローは内科というように、連携を取りながら「集学的医療」を行っています。

そこで、聖路加では移植周術期は外科(泌尿器科)が、それ以外は主に内科(腎臓内科)が管理するアメリカ式の腎移植を開始しました。米国移植専門医を取得している長浜正彦医師を中心に移植候補の選定から術前の検査、さらに術後の長期フォローに腎臓内科が関わることのメリットを生かして診療にあたっております。

腎臓病全般(保存期腎不全、血液透析、腹膜透析、腎臓移植)を単独施設で扱うことのできる病院は日本では珍しく、腎臓病の初期から末期腎不全までを広い視野で捉えた医療を提供します。

広報誌『St.Luke's』の特集記事はこちら=>>St.Luke's No.17 【2012年2月号】

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腎臓移植とは

手術1

なんらかの原因により、腎臓が正常な尿を作れなくなってしまった状態を腎不全といいます。
腎不全が進行し腎臓の機能がある基準値以下に低下すると、自分の腎臓だけでは生命を維持することが困難となります(この状態を末期腎不全といいます)。
末期腎不全まで状態が進行した場合、透析療法を受けるか腎移植が必要となります。
腎移植は、末期腎不全の患者に対して、正常な機能の腎臓を移植する治療方法です。腎移植には、家族や身内から腎臓の提供を受ける「生体腎移植」と、脳死や心臓死になられた方からの腎臓の提供を受ける「献腎移植」の2種類があります。
当院では、現在、生体腎移植のみを実施しています。

腎臓の提供を受ける人を「レシピエント」、腎臓を提供する人を「ドナー」と呼び、腎移植を行うまでに、どちらもいくつかの診察や検査を受けて頂きます。

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腎移植のメリット・デメリット

腎不全に対する治療のメリットは以下の通りです。
年齢や体質、ライフスタイルに応じて腎移植を行うかどうかを決定します。

  血液透析 腹膜透析 腎移植
腎機能 悪いまま かなり正常に近づく
毎日飲むお薬 腎不全の諸問題に対する薬剤
(貧血・骨代謝異常・高血圧など)
免疫抑制剤
その副作用に対する薬剤
生存予後 移植に比べて悪い すぐれている
心筋梗塞・心不全・
脳梗塞の発症率
多い 透析に比べて少ない
生活の質 移植に比べて悪い すぐれている
生活の制約 多い
(週3回、1回4時間以上
の通院治療)
やや多い
(透析液交換・装置の
セットアップなど)
ほとんどない
社会復帰率 低い 高い
食事・水分摂取の
制限
多い
(蛋白・水・塩分・
カリウム・リン)
やや多い
(水・塩分・リン)
ほとんどない
手術の内容・麻酔 局所麻酔での手術 中規模手術 全身麻酔での大規模手術
通院回数 週3回 月1〜2回 移植後1年以降は月1回
旅行や出張 旅行先でも透析を行う
必要がある
透析装置・透析液
の持参が必要
自由に行える
スポーツ 自由 腹圧がかからないように
気をつける
移植部の保護が必要
妊娠・出産 困難 腎機能良好なら可能
感染への注意 必要 やや必要 重要
入浴 透析後はシャワーが望ましい 腹膜カテーテルの保護が必要 問題ない

[出典:日本腎臓学会 日本透析医学会 日本移植学会 日本臨床腎移植学会]

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レシピエント(腎臓の提供を受ける方)について

レシピエント候補になれる方

原則、末期腎不全の方は全員が移植の候補者と捉えることができます。
しかし、重症な心臓病や悪性腫瘍、感染症などがある場合は移植手術を受けられないことがあります。
必要な診察や検査を行ったうえで問題がないと判断された方が、レシピエントになることができます。
また、生体腎移植の場合は親族に適切なドナーがいなければなりません。
透析導入前の保存期腎不全の患者さんも移植を受けることができます(先行的腎移植。)

レシピエントに行う診察・検査

レシピエントの方の診察・検査はすべて外来で行います。
(通院困難である場合は、当院近くのホテルに優待価格でご宿泊頂けますので、ご相談ください。)

初回の診察

移植医師および移植看護師との面接を行います。
腎移植手術について情報を提供したうえで、ドナー候補を含めて一度検討していただきます。
ドナー候補が決定しましたら、検査が開始となります。

検査の内容

移植手術に耐えられ、移植後も健康な生活を送ることができるように各種の検査をしていきます。
いくつかの検査を複数回行うため、検査終了までにおよそ 3〜6ヶ月の時間を要します。
主な検査項目は、採血・心電図・レントゲン・尿検査・胃内視鏡・心臓エコー・心臓CTなどです。

レシピエントにかかる費用

初回の検査に約5万円かかります。ただし、移植前検査費用はレシピエントの医療保険が適用され、更生医療などでほぼ全額助成されます。検査の結果により他の疾患が発見され、治療が必要になった場合、その治療費は自己負担となります。
腎移植の手術費用も全て更生医療が適用され、ほぼ全額助成されます。
(ただし、お住まいの自治体や収入等に応じて助成される内容が変わることがあります。詳しい助成の内容については、その都度ソーシャルワーカーよりご案内いたします。)

入院の流れについて

入院の流れは、手術を行う前日に入院し入院2日目に手術を実施します。手術後は、手術翌日には食事を開始、翌々日には歩行が可能となり、約1週間で退院となります。
退院後1ヶ月程度は比較的短い間隔で外来へ受診して頂きます。そして術後2〜3ヶ月で社会復帰が可能となります。

手術(腎臓移植術)について

全身麻酔を使用した開腹手術を行います。通常の手術時間は4時間程度です。腎臓は本来背部にありますが、腎移植の際には腹部へ移植します。

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ドナー(腎臓を提供される方)について

ドナーの候補になれる方

日本移植学会の倫理指針によりドナーの対象者は、患者さんから見て、6親等以内の血族と3親等以内の姻族ドナーの対象となっております。
心身ともに健康な成人であり、必要な診察や検査を行ったうえで問題がないと判断された方が、ドナーになることができます。一般的には外来通院や常用薬が必要な方は、ドナー候補にはなりません。

ドナー候補者

ドナー候補者

ドナー候補に行う診察・検査

ドナー候補の診察・検査はすべて外来で行います。
(通院困難である場合は、当院近くのホテルに優待価格でご宿泊頂けますのでご相談ください。)

初回の診察

移植医師の診察および移植看護師との面接を行います。腎移植手術について情報を提供したうえで一度検討していただきます。腎臓を提供する意思が確認できましたら、検査が開始となります。

検査

『腎臓提供後に腎臓が一つになっても健康に過ごす事ができるかどうか』について検査していきます。
いくつかの検査を、複数回行うため、検査終了までにおよそ3〜6ヶ月の時間を要します。
主な検査項目は、採血・心電図・レントゲン・尿検査・胃内視鏡・腹部CT・腎臓核医学検査などです。
腎臓提供の意思確認に関しては、移植チームと直接関係のない精神科・心療内科で合わせて2回の診察を行います。

ドナーにかかる費用

初回の検査に約5万円かかります。移植前検査費用は、レシピエントの医療保険、更生医療が適用されほぼ全額助成されます。検査の結果により他の疾患が発見され、治療が必要になった場合、その治療費は自己負担となります。
腎移植の手術費用も全てレシピエントの更生医療が適用され、ほぼ全額助成されます。

ドナーの入院の流れについて

手術を行う前日から入院となり、入院2日目に手術を実施します。
手術後は、手術をした当日から食事を召し上がっていただくことができます。
さらに手術後1〜2日で歩行が可能となり、経過が順調であれば手術後5日目程度で退院できます。
退院後は定期的な外来受診が必要となります。術後約1カ月で社会復帰が可能となります。

ドナーに行う手術(腎臓摘出手術)について

原則、腹腔鏡を使用して手術を行います。腹部に4〜5か所の小さな穴をあけ、腹腔鏡を挿入して腎臓の摘出を行います。
開腹手術に比べ術後の痛みが少なく、回復が早く進みます。

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費用・公的保険について

※自治体や収入によって助成を受ける資格、助成内容が異なることがあります。

腎移植の医療費

腎移植に関する医療費は健康保険の対象となっています。患者さんの支払いは原則、一定割合の自己負担分のみです。
その自己負担分も、以下の様な制度によって大幅に軽減されます。


-移植手術・入院-

特定疾病療養費制度(透析患者を対象とする)によって、移植手術費用の自己負担分が月1万円まで軽減されます。
また入院費用もこの特定疾病利用要費制度、身体障害者への医療費助成によってほとんどカバーされます。

-退院後の通院・免疫抑制剤の費用-

透析患者が腎移植を受けた後も、身体障害者1級の資格は継続されます。
身体障害者に対する更生医療、または重度身体障害者医療費助成制度の対象となり、自己負担分はかなり軽減され無料になる場合もあります。

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予約方法・お問い合わせ

患者の皆様へ

腎移植を希望される方に対して、『腎移植外来』を開設しております。
『腎移植外来』の受診予約は、医療機関からの予約のみとさせていただいております。ご受診をご希望の場合は、受診されている医療機関の医師にご相談ください。


地域医療機関の先生方へ

現在『腎移植外来』の予約取得は、医療機関からのお問い合わせのみとさせて頂いております。
腎移植をご希望の方のご紹介・ご質問等がございましたら、医療連携相談室(03-5550-7105)
もしくは、下記LINK先よりお問い合わせ下さい。

【腎臓移植外来】ご相談窓口 : こちらは、医療者専用のご相談窓口になります。

※患者さんご本人またはご家族などからのご相談は承っておりません。移植をお考えの方は、まず主治医にご相談ください。

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患者さんの声〜腎移植体験記〜

2011年6月以降に当院にて実際に腎臓移植の手術を受けられた患者さんの体験記です。

ドナー(50代・女性)

主人の透析が時間の問題となった時に移植の話しがでて、迷わず私がドナーでの移植を希望しました。
中学生の子供の未来、主人の未来を守ることで家族の未来が守れると思うと嬉しかったです。移植の説明を長浜先生、看護師の高澤さんからして頂き血液型が違っても移植が出来る事がわかり最善の選択が出来ました。
病院に殆ど通った事が有りませんでしたので、検査は勝手も分からず緊張もしましたがどの科でもスタッフ皆さんの丁寧な対応に安心して検査を受けられました。移植手術が出来ることが決まった時は嬉しくてほっとした反面、怪我や事故にあえないと新たな緊張も出てきました。
担当の高澤さんは色々な角度から説明して下さり、心の準備と環境を整えながら手術を迎えました。術後の回診は何度も有り丁寧で相談もしやすく、病室は個室なので気兼ねする事もなく過ごせました。
  退院後は傷が予想以上に痛く、暫く生活は大変でしたが傷みも日薬りで徐々に薄れていきました。 手術後の食事は、塩分制限程度になったので食事の用意が楽になり食卓も豊かになりました。 普通の食事と生活が出来る事に幸せを実感しております。
折々に触れた、腎移植センター以外で私達の気持ちを分かって下さるスタッフの皆さんの心遣いと対応に、移植手術に色々な形で携わって頂いた方々は 病気治療の為に共に戦って下さる同志と感じました。
各科の先生、手術室の看護師さん、ICUの看護師さん、病棟の看護師さんはもちろん陰ながら対応して下さったスタッフの皆さんに心より感謝申し上げます。

レシピエント(50代・男性)

慢性腎炎で厳重な管理をしていましたが、いよいよ透析を視野に入れないといけない状況となり、職場の看護師や医師に相談したところ、移植が絶対にいいと強くすすめられました。
私は父が長い間透析をしていたので透析だけはやりたくないとずっと思っていました。しかし、移植は自分では全く考えていなかった、いやドナーの事を考えると考えてはいけないと思っていました。しかし移植は特別なことではなく、みんなが幸せになることと強く背中を押してもらったことで家族に移植の話しが出来、家内がドナーとなると申し出てくれました。
また、聖路加は特に看護がいいからと勧められて、昨年7月に初めて夫婦で相談に行きました。 腎臓内科ドクターや移植コーディネーターの看護師さんから丁寧に説明を受け、約6ヶ月かけて移植への決意や移植が可能かの検査を受けました。特に家内は何度も何度も移植への同意の確認を丁寧にされて、また、ドナーとなる家内の思いをじっくりと聞いてくれて安心できたと言っていました。
大変な検査もありましたが、順調に検査を終えていよいよ手術日が決まってから、あれほど望んでいた移植への考えがいままで感じたことのない不安に変わって襲ってきました。
私は透析前の先行的腎臓移植だったこともあり、本当にこの判断は間違っていなかったのか。 家内に負担をかけることが間違っていないか、まだ透析になるまでにやれることはなかったかと… その時、家内の移植に対する決意の強さに助けられました。
入院生活は沢山の方々に守られていると感じて安心出来ました。 聖路加には、心を私たち患者に置いてくれていることを感じました。携わっていただいたすべての方々に本当に感謝です。 また入院して医療はチームだと、本当に目に見えない方々も含めて沢山の方々にお世話なっていることがわかりました。
手術後11日で退院。約3ヶ月で正式に復職することが出来ました。 厳重な食事制限もなくなり、食事等の家内の負担もなくなり、家族で食事を楽しむことも出来るようになりました。
また、常に不安を感じていた生活が前向きに考えることが出来るようにもなりました。 今回手術を受けて、腎臓移植は特別なことではなく、選択肢のひとつだということを実感しています。
各科の先生方、看護師さん、検査技師さん、薬剤師さん、携わっていただいたすべてのスタッフの方々に心から感謝し、聖路加で手術出来て本当に幸せでした。
ありがとうございました。これからもよろしくお願いします。

レシピエント(30代・女性)

5年程前から腎臓の状態が思わしくなく、ずっと通院・投薬治療を続けておりました。完全に腎臓が力尽きてしまったのが今年に入ってからです。
先生には透析か移植が必要だというお話を頂き、また透析治療よりも移植をすることがベストだという助言も頂きました。両親に相談したところ、父が「自分がドナーになる」と名乗りを上げてくれたのです。その時はうれしい気持ちの反面、不安でもありました。 手術や拒絶反応に対する不安ではなく、本当に父から腎臓が一つなくなっても大丈夫なのか?という不安でした。先生は、厳密に検査をした上での手術であり何かあれば手術は行わないとのことでしたが、やはりその不安は拭いとることができませんでした。
移植をすることが決定してからは父も私も検査、検査の日々でした。本当に隅から隅まで調べて頂いたように感じます。むし歯治療をし、おやしらずまで抜いたことには驚きました。結果、父も私も手術をするには全く問題のない体であること、またマッチング検査ではとても相性が良いということで、手術や拒否反応の不安は全くなくなりました。
検査をしながら3か月の透析治療をし、あっという間に手術の日がやってきました。「これで透析治療が終わり、自由な生活が戻る」と思うと、とても晴れやかな気持ちであり、また驚くほど冷静な気持ちでいることができました。
術後は傷口の痛み、体力の低下、高血圧から急に正常値に戻ったことによるめまい、脱水症状などがありましたが、約2週間の入院を経て退院となりました。体は月単位で徐々に回復し、以前は週2回の診察が今では2週間に1回の診察となりました(2011年10月現在)。
仕事復帰も果たし、何の不自由もなく日常生活を送っております。体調もとても良く、体が軽くなった、疲れにくくなった、朝の目覚めがよくなった、顔に吹き出物が出なくなったということを実感いたします。職場でも「顔色が良くなった」「元気になった」という声をかけていただきました。透析中はたくさんの食事制限がありましたが、それもほとんどなくなり、気を付けることは、塩分は控えめにということくらいです。
腎臓が一つになった父も今では元気になり、仕事復帰もしましたので、少し安心しております。
私がこんなに元気になれたのも、ずっとケアしていただいた先生方や看護師の皆さん、入院中や術後の世話をしてくれた母、そして何よりも腎臓を提供してくれた父のおかげと思っております。
日本では移植に対する法律が厳しいため、移植をしたくてもできない方がたくさんいらっしゃいます。実の父がドナーとなってくれた私は、とても運が良いのです。やはり透析治療というのは週3回、4時間拘束されてしまうという点でとても苦痛に感じます。より多くの方が移植手術をし、自由な時間を取り戻すことができれば…と切に願っております。
最後に、これからの私の使命は父からもらった腎臓を大切にしていくこと、そして明るく楽しい人生を送ることだと思っております。

ドナー(60代・男性)

私たち親子は6月30日に聖路加国際病院にて生体腎移植を取り行うことができました。結果は二人とも元気いっぱいですので、手術に関しては何の問題もないと感じています。私たちにとって一番よかったことは、娘がごくあたりまえの、ごく普通の、日常生活を送ることができることです。 これが私たちの切なる願いでもありました。この度手術となりまして、その願いがかなったということに、感謝をしてもしきれない気持ちでいます。心よりお礼を申し上げます。
今までの経緯をお話したいと思います。娘が2月の初め頃に突然私たちのところに来まして、「移植をしなければいけない」と言いました。ことの重大さにまずびっくりしましたが、すぐに「私の腎臓を使ってくれ」と伝え、3月に長浜先生と看護師の今井さんにお会いしました。
娘は移植手術まで、血液透析を受けながらでしたので大変だったと思います。5月30日に、手術が6月30日に決まったと伝えられました。不安は感じておらず、手術ができるという喜びの気持ちが強かったです。当日は先生方が「今日は気合を入れてやります」と仰って下さり、ますます不安がなくなりました。手術時間や入院期間もほぼ予定通りに進みました。入院中は食事や仕事のことを考える暇もなく、それを超える看護をしてもらったと思います。退院後のケアも十分にしてもらえました。
移植手術については我々がどうしたということはなく、こちらの医師やスタッフの皆さんに委ねました。医師やスタッフの皆さんに感謝しています。一番心配かけたのは妻やもう一人の娘だと思いますが、彼女たちにも感謝の気持ちを伝えたいです。

レシピエント(40代・男性)

移植は大変な事だと思っている方が多いと思います。実際に大変な事が多いのも事実です。他のレシピエントの方も書かれていますが、術前検査、マッチング等々…でも、それは必要な事で肉体的に乗り越えられないものでは全くありません。
私が一番大変だったのは、自分自身の葛藤でした。恥ずかしい告白ですが、私は妻が大好きです。そんな妻から、移植をしてもらう事が果たして良いのだろうか?僕のエゴなのではないか?本当に申し訳なく済まない気持が心を占めていました。実際に移植後、移植を考えている方達や移植をした方達と交流する機会があり、そこでも多く聞かれた声のひとつでした。
でも、そのような方達にもお伝えするのですが、大切な事は「ドナーの思い」である事だと。たとえ一日でも良いから、より良い生き方ができる事を心から願っているのです。そして、同じ様に私達の移植にたずさわってくれた聖路加病院の全てのスタッフ方達も、移植を希望する人たちがより良い人生を送れるために、病院一丸となり取り組み努力してくれている事を感じました。
各科の先生やICU・病棟・各科の看護師・管理栄養士・臨床検査技師や助手さん、受け付けの方までみんな有り難う。そして、聖路加病院で移植手術を受けられて本当によかった。又、僕の体験記が役立つことを願っています。
最後に、僕を担当してくれた二人の看護師、高澤さん、今井さんに感謝して終わらせて頂きます。「ありがとう、これからもよろしく。」

ドナー(30代・女性)

「腎移植」自分には縁のないものだと思っていた。まさかドナーになるなんて、考えた事もなかった。だが、夫が腎不全になり、妻の私がドナーになれる、そう知った時、何の躊躇もなくドナーになろうと決めた。不安はなかった。ただ夫が元気になるなら、その思いだけで必死だった。
心配事はひとつだけ。私がドナーになる事を両親がどう思うか。両親は「娘の決断を尊敬する。何でも協力するから心配しないで二人で元気になりなさい」と言ってくれた。反対に、腎移植に理解のない人達もいた。そんな人達を「元気になって見返してやろう」移植への思いは更に強くなった。
腎移植の事を調べると、レシピエントの事は山ほどわかるのに、ドナーについての情報は、すごく少なかった。
そんな時出会った聖路加の腎移植。長浜先生を中心とした米国式の腎移植スタイル。ここならドナーへのフォローも万全。聖路加以外での移植は考えられなくなった。移植前の外来から担当看護師がつき、私達の移植をコーディネートしてくれた。担当看護師の今井さん、高澤さんは親身になって相談にのってくれた。私は看護師なので、かなり厳しい要求をしたと思うが、二人はそれに答え、移植後の現在も会うとホッとする存在でいてくれている。
手術は、気持ち良く寝ている間に終わったという感じ。麻酔だけなら、またかけてもらって良く寝たい、と思う程快適だった。術後、先生方が夫の様子を説明してくれたり、ICUの看護師さんが、沢山チューブの入っている夫を、車椅子に乗せ、一般病棟にいる私に会うために連れてきてくれた。その心遣いに感動した。また、夫が一般病棟に戻ってからは、病棟看護師さんの配慮で、ほとんど夫と一緒に過ごせた。
術後の経過は順調で、私は入院1週間、夫は術後1週間で退院できた。夫婦二人で術後の自宅療養、通院は大変だったが、家族の協力を得ながら日に日に回復する事ができた。
大事をとって、術後2.5ヶ月で看護師の仕事へ復帰、術後5ヶ月で夜勤もできるまでになった。時々夫の受診についていくと、様々なスタッフが夫に声をかけてくれる。移植に携わった全てのスタッフから、暖かく見守られているのを感じる。これが聖路加のホスピタリティなのだろう。
尊敬できる医師、看護師、医療従事者達、移植にまつわる全ての出会いに感謝している。多くの人達の協力を得て、取り戻した生活を大切に、夫と手に手を取り合って生きて生きたい。

ドナー(60代・男性)

「娘さんの腎臓はまったく機能していません。この血液検査の数値は死亡した人と同じです。今生存して居るのが不思議です。」
この言葉が、娘が救急車で搬送された病院の先生から開口一番発せられました。応急処置ですぐ帰宅できると思っていた私は一瞬心臓にナイフがささった様な気分になりました。医師からは血液透析をするしか無いとのこと。最悪の場合何々と説明を受け同意書にサインをするたびに、全てお任せだから早く助けてくれと思いながらも、ダメかもしれないと胸騒ぎがしました。
一週間程して自分の免疫が自分の腎臓を攻撃する稀な病気と判明しました。腎臓の回復は不可能で今後透析をしなければなりません。まだ若く、子供もいないのですぐ移植の申し入れをしましたが、今すぐでは再発の危険性があると説明を受けました。腹膜透析を開始し、退院しました。
それから2年後、移植を行うために聖路加国際病院へセカンドオピニオンをしました。日野原先生のお人柄、病院としての理念を理解した時、このような病院であればそれぞれの方が理念に沿った行動、考え方をしている訳だから間違いないと思ったからです。
私は、肺結核や肝炎で入院したことがあったので腎臓提供が可能か心配していました。移植の申し込みをしてからは、ケガをしない様に病気にならない様にと慎重に生活しました。6カ月間で移植前の検査が終了し、無事ドナーとなる事が出来ました。
手術日が決定してから入院までの1カ月間、仕事や身の回りを整理しました。予定ではゆったりした気分で入院を迎えるつもりでしたが、時間が足りず大急ぎで病院に向かいました。病室へ入るまで、どんな部屋か看護師さんはどんな方かなど、楽しみの連続でした。エレベーターを降り、セキュリティーの扉を開けて中に入り今まで見た事もないナースステーション、廊下やどこを見ても掃除の行きとどいた美しい空間、看護師さんの明るく優しい丁寧な言葉使い、温かくおいしい食事、全室個室、弱った体を回復させるのにふさわしい環境。やはり聖路加国際病院に決めて良かったとつくづく思いました。
手術当日、手術室のドアの前で娘の主人に「後は全て頼むよ。」と言い中へ入りました。手術台に上がると麻酔がかかりました。「終わりましたよ。」という声で目が覚め、ようやく手術が終わったのだと理解しました。朦朧とする中、最初に頭に浮かんだのは娘の事でした。看護師さんに伺うと、元気で隣の部屋に居るとの事で安心し、再び眠りに入ってしまいました。一日で集中治療室から病室へ戻り、個室で過ごせる事は本当に助かります。よく眠る事が出来、清潔なシャワーとトイレがあり気分良く退院の日を迎える事が出来ました。広報誌にて寄付金を受け付けている事を知り、この病院で手術を受ける事が出来て本当にうれしく有難く、素直な気持ちで寄付をさせていただきました。
8日間で退院し最初の1カ月間は傷の痛みとだるさ、3カ月目で腎臓を摘出した所の痛みがおさまり、5カ月経過した今は、午後になるとだるくなる状態があるだけで順調に過ごしています。普通だったら死亡していた娘が、今回の生体腎移植を受け、今普通の生活ができる有難さ。本当に感謝します。日々社会に恩返しを考えている所です。今回の体験で得た事は、「健康が一番、人間生きているだけで良い」という事でした。一人ひとりがもっともっと自分の健康管理をして世界中の人が健康で幸せな人生を歩むことが出来る様祈ります。
この度の手術でお世話になりました病院の方々に心から感謝します。本当にありがとうございました。

レシピエント(40代・女性)

ある日突然倒れ病院に運ばれ、透析患者になりました。
透析をはじめた当初、「移植は山あり谷ありだから簡単ではない」と言われました。「この先、一生、透析をするのか・・・」と恐ろしくなりました。それでもいつか必ず生体移植を受ける、と決めました。無理矢理にでもそう思わなければ、現実を受け入れる事なんてできないと思ったからです。それからまもなく父が自分の腎臓をあげると申し出てくれました。移植が現実的な段階になるまでは、父がドナーになれる確率など、詳しい情報はあえて調べない事にしました。ネガティブな情報を知ってしまった場合、希望が持てなくなると思ったからです。自分のお腹から腹膜透析のカテーテルが出ているのを見て、みじめな気持ちになりました。腹膜透析がしんどくて(私には性格的に向いてなかった気がしますが)、気持ちが疲れてしまった時も、「今は移植までの仮の状態だから。あと少しの辛抱だから。」という気持ちが常に支えになりました。
そんな透析生活でしたので、移植の手術前も、透析から解放される嬉しさや感慨深さの方が強く、不安は感じませんでした。手術直前、最後の透析を終えた後、あれだけ嫌だった透析の道具に対して、不思議なことに名残惜しさを感じました。2年間毎日付き合ってきた相棒です。今まで命を繋いでくれてありがとう、という気持ちになりました。手術室に入ってたくさんの機械を見た時だけ、少し緊張しましたが、手術台に上がってすぐ全身麻酔がかかり、拍子抜けするくらいあっけなく終わりました。術後の痛みも、痛み止めが常に効いていたので何の問題もなく、ICUの快適さと看護師さんたちの手厚い看護には、感動すら覚えました。術後、3日目には病棟内を歩け、10日で退院しました。
体の回復は、1ヶ月目では、健康な状態を体が思い出したなと感じました。どこがどう、とは言えないのですが、味覚や顔色の変化だけでなく、透析の時とは明らかに体調が違うのです。体が軽い感じ、というのが近いかもしれません。3ヶ月位で、家の中での日常生活はほぼ元通りになり、そこから無理をしすぎず少しずつ活動量を増やして職場も復帰し、現在(移植後7ヵ月後現在)は90%、以前の生活リズムを取り戻しました。最近では、移植や透析をしていたことを忘れる時さえありますが、この猛暑の中、量を気にせずガブガブ水を飲んでいると気付いた時、幸せな気持ちになります。あんな小さな腎臓ひとつが、どんな機械より精密に体を調整してくれているのだと思うと、人間の臓器の凄さを思い知らされます。
今、全体を振り返ってみると、一番労力を使ったのが、移植前検査です。検査自体は痛い、辛いというのはないのですが、スケジュールがかなり忙しくなる、という点です。これから移植を控えている方は、仕事や家の事など、入院前に片付けておきたい事は可能な限り早く済ませておく事をお薦めします。手間暇はかかりましたが、人間ドッグのように全身検査できる機会はとても貴重でした。現に私は、婦人科の検査で子宮けいがんの一歩手前の物が見つかり、移植1ヶ月半前に、1泊入院で手術を受けました。移植のおかげで、がんになる前に治療する事ができ、私はとても運がよかったと思います。
聖路加で一番素晴らしいと思ったのは、どの科の先生も、明瞭簡潔で親切に説明して下さいました。更に、こちらの質問や話もきちんと聞いて頂けたので、安心できました。また、最初から最後まで、同じ看護師さんがコーディネーターとして担当についてくれた事も、とても心強く安心に繋がりました。手術に不安がなかったのも、半年の間に先生方や看護師さんたちに信頼感を持てたからだと思います。聖路加でお世話になった半年間は、私の人生で特別な時間になりました。
私が透析患者になってすぐ、父は、自分の腎臓をあげる、お前の腎臓は必ず治してやるから心配するな、と言ってくれました。その言葉が、どれだけ励みになったかしれません。生体移植のできる病院を探していた時、私は、ドナーとなる父の意見を尊重しようと決めていたので、聖路加国際病院という希望に賛同したのですが、父の感覚と選択は正しかったと思います。
これからの私の一番の親孝行は、まずは孫の顔を見せて、そして私自身が長生きする事だと思っています。移植後1年経過し腎機能が安定していれば、妊娠出産が可能との事なので、それを目指して、頂いた腎臓を大事に過ごして行きたいと思います。いつか子供が生まれたら、聖路加の皆さんに見せに伺いたいと思っています。長浜先生、今井さん始め皆さん、本当にありがとうございました。次にお会いする時は、更に元気な顔をお見せします。

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