左の図は、急性心筋梗塞の患者さんが、病院に到着してからPCIが行われるまでの各プロセスにおいて、それぞれどの程度の時間がかかっているかを分析したものです。まず、ER(救命救急センター)滞在中の基本プロセスには以下の要素があります。
次に、心カテ室に移動してから、PCIを実施するまでのプロセスには以下の要素があります。
各プロセスでの所要時間をみてみると、『患者を問わず一定の時間がかかっているプロセス』と、『患者によって所要時間のバラツキが大きいプロセス』があります。例えば、患者Eは、非典型的な症状があり、徒歩で来院したために診断に時間がかかり、心電図をとるまでに21分かかりました。 患者Dは、心カテオーダーまでは15分しかかかっていないのですが、心カテ室が使用中だったため、心カテ室に入るまでに45分かかってしまいました。患者Fは、血管の蛇行が強く、ワイヤークロスまでに22分かかりました(平均10分)。
このように、PCI実施までにはさまざまなプロセスがあり、複数の職種が関与します。このため、ERで診断を行う医師(研修医も含む)のレベルアップ、ERと循環器の連携強化、心カテ室のキャパシティ増、PCIの技術向上など、多面的な見直しが必要です。また一方で、血管が蛇行しているためにガイドワイヤーが早く通過出来ないケースなど、患者個別の冠動脈の解剖学的状況と血行動態に影響されるという側面もあります。