聖路加国際病院

St Luke's International Hospital

乳腺外科

乳がんとはどのようながんでしょう?

現在の日本では年間約9万人をこえる人が乳がんにかかるといわれ、罹患率は女性のがんの第1位になっています。女性のライフスタイルの変化や食生活の欧米化などがその背景として考えられています。

乳がんの発生・増殖には、特に女性ホルモン(エストロゲン)のバランスが関係しているといわれています。年齢的には、40歳代〜50歳代、閉経の前後にある女性に一番多く、次いで30歳代、60歳代に多く、少数ではありますが20歳代の女性、70歳代以上の女性、また男性にも発症がみられます。

非浸潤がんから浸潤がんへの変化

乳房はおもに母乳を分泌する乳腺組織と脂肪組織から形作られています。乳がんはこの乳腺組織に発生する腫瘍です。母乳が作られる小葉からその通路となる乳管に移行する部位から発生し、増殖しながら乳管の内側を進展していきます。

がんがこの乳管の内側にとどまっているものを非浸潤がんといい、リンパ節や遠くの臓器に転移することはありません。真の意味での早期がんです。この段階で見つかるのは現在のところ乳がん全体の10〜20%です。

一方、乳管の壁を壊し、がんが周りの組織(間質といいます)にまでおよんだものを浸潤がんといい、リンパ節や遠隔臓器に転移する可能性があります。非浸潤がんを放置すると、多くは浸潤がんになっていくことがわかっています。

手術前に針生検などで非浸潤がんと診断されても、それは病巣のごく一部をみて判断されたものであり、実際にはどこかに浸潤している部位があるかもしれません。そのため治療法を慎重に考える必要があります。

また乳がんは、がん細胞の悪性度、発生部位、エストロゲン依存度の有無、治療に対する反応、リンパ節および乳房以外への転移状況など、様々な要素により分類されます。このような詳しい内容や分類は画像診断や生検、手術で摘出したがん細胞の病理検査によって判定します。

悪性腫瘍という言葉が使われることもあり、この中にはがんおよび肉腫と呼ばれるものが含まれます。肉腫は頻度が少ないので、多くの場合悪性とがんは同じものを指していると考えてよいでしょう。

乳がん

リンパ節

リンパ系の一部で、全身に存在する豆のような形をした器官です。体内の組織のあいだを流れるリンパ液を通過させ、老廃物や細菌、がん細胞などの異物をろ過する働きがあります。リンパ腺とも呼ばれ乳房の近くには、腋窩(わきの下)、鎖骨の上下、胸骨の横にあります。リンパ節へのがんの転移の有無はその他の場所へのがんの転移を予測、および治療方針を決定するために重要です。

エストロゲン

女性ホルモンのひとつで、主には卵巣で作られます。子宮の発育、子宮内膜の増殖、乳腺組織の発育、月経、2次性徴の発現などをおこす働きのあるホルモンです。閉経した後もエストロゲンは体の中でつくられます。そこで重要な役割を果たしているのは脂肪組織です。

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