腎臓病について

腎臓病について

腎臓の仕組みと働き

腎臓はおへその高さで背中に左右ひとつずつあるそらまめの形をした臓器です。それぞれの腎臓には毛細血管が毛糸玉のようにまとまった構造の「糸球体(しきゅうたい)」というろ過装置が100万個あり、血液をきれいにするはたらきをしています。

腎臓のおもなはたらき

腎臓の病気ではこうした働きが弱るため、体に余分な水分や塩分がたまることで血圧が高くなったり、浮腫(むくむこと)が出現します。また老廃物(尿毒素)がたまると、だるくなったり、食欲がなくなったり、吐き気や頭痛がみられるようになります。造血ホルモンが足りなくなるために貧血(赤血球がたりなくなること)も出現します。その結果として息切れやつかれ易さなどの症状もみられるようになります。

腎臓病を調べる方法

腎臓病の症状は、他の病気でもみられるために自覚症状から腎臓病があることをみつけることは困難です。そのため血液検査や尿検査から偶然に腎臓病であることがわかることも多いのです。

血液検査

尿素窒素(BUN)、クレアチニン(Cr)
尿素窒素やCrの増加は血液中に老廃物(尿毒素)がたまっていること、すなわち 腎臓の働きが低下していることを意味します。クレアチニンの基準値は一般には0.6~1.0mg/dlとされていますが、年齢、性別によって異なります。
そこでクレアチニンの絶対値よりもむしろクレアチニンの値からGFR(糸球体濾過値)を計算して腎臓の働きを評価することが勧められています。GFR(糸球体濾過値)は、「1分間あたりに腎臓が何ミリリットルの血液をきれいにすることができるか」を表しており日本人の基準値は75ml/mi/1.73m2です。

尿検査

腎臓病では尿に赤血球や蛋白がもれでてくることがあります。通常では尿には赤血球や蛋白はほんのすこししか漏れでないため、尿中の赤血球数増加(血尿といいます)や蛋白増加(蛋白尿といいます)がみられるときには腎臓病を考える必要があるでしょう。
健診などで蛋白尿、あるいは血尿と蛋白尿がみられたときには腎臓専門医にかかってください。一方、蛋白尿がなく血尿だけの場合、とくに眼で見てわかる血尿(肉眼的血尿)の場合には、尿道路感染結石や腫瘍を疑わなくてはならないので、早めに泌尿器科を受診してください。

慢性腎臓病といわれたら

人口の約1~3割は程度の差はあれ慢性腎臓病をもっているといわれています。
腎臓のはたらきが正常の働きの6割未満の場合や、腎臓が原因で血尿と蛋白尿が続く場合などを慢性腎臓病といいます。慢性腎臓病は自覚症状がなく、病気の進行がきわめてゆっくりしているために、残念ながら治療をしないで放置してしまうことも多いのです。日本人に多いIgA腎症という慢性糸球体腎炎は、放置すると3~4割の方が20年後に腎臓の働きが失われ、透析が必要な状態になるといわれています。
現在、世界中で増えている糖尿病でも、2~3割の方で腎臓が悪くなるといわれています。初期の段階から血糖、血圧のしっかりした治療などを中心とした治療をつづけることで腎臓が悪くなることを防ぐことができますが、自覚症状に乏しいとついつい病院にくることを先延ばしにしがちです。
高血圧、糖尿病、心臓病をもっているかたは、一般の人よりも腎臓病になりやすいといわれていますので、注意が必要です。

一方、慢性腎臓病といわれても、治療の必要性や腎臓病の進行速度は人によって異なっています。血圧が正常で蛋白尿もない場合には、腎臓の働きが健康な人にくらべて低下していても腎臓病が進行する速度がきわめてゆっくりしており、特別な治療をしなくてもよいことがあります。
ただしこの場合でも定期的な検査をうけて悪化がないことを確認することは必要でしょう。いずれにしても「慢性腎臓病」の疑いがあるといわれたら放置せず一度は腎臓専門外来を受診することをお勧めします。

慢性腎臓病と上手につきあっていくためには

正しい診察をうけること

腎臓病は進行しないと自覚症状がでにくい病気です。 症状がなくても健診やかかりつけ医での検査などで異常を指摘された際には、一度腎臓専門医にご相談ください。 慢性腎臓病は完治することは難しいので、治療の目標は(1)慢性腎臓病が進行することを防ぐ、いいかえれば腎臓のはたらきをまもっていくこと (2)慢性腎臓病による症状・合併症(高血圧、貧血、心臓への負担など)を治療し、毎日楽しく元気にくらすことが出来るようにすることです。自覚症状がほとんどなく、治療効果もわかりにくいため定期的な受診で血液、尿検査をつづけることが大切です。治療の中心は、血圧をしっかり下げることと食事療法です。

血圧の管理

腎臓は血管の集まりなので、血圧が高くなると腎臓に負担がかかります。130/80mmHg未満を目標にしてください。血圧は時々刻々変化するので、外来の血圧だけを目安にするよりも、家庭での血圧を測定しご自分の血圧がどのくらいかを知っておくことが治療の第一歩です。太りすぎや塩分の取りすぎも血圧を高くする原因です。太りすぎのかたは適度な運動や食事療法で減量につとめてください。塩分の摂取量は、食塩にして6gが勧められています。

食事療法

血圧をしっかり下げるためにも適切な食事療法は大切です。また、腎臓の働きが弱ってくると蛋白質の取りすぎは腎臓に負担をかけることになります。

慢性腎臓病が進んだときにはカリウムやリンの制限が必要になることもあります。食事療法の内容は、もとの病気の種類や慢性腎臓病の程度によって異なるため担当の医師や栄養士の指示にしたがって、根気強く続けてください。