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腎センターの特徴は、保存期慢性腎臓病から透析療法まで、腎臓病・関連疾患に関わる全ての方の 治療をサポートできることです。専任の医師・看護師・薬剤師・栄養士がチームで皆様の腎臓病診療に あたらせていただきます。
腹膜透析はからだにやさしい、自宅でできる透析療法です。24時間かけてゆっくり透析をするので血圧が下がったりすることもなく、痛みもありません。通院も月に1~2回ですむので忙しいかたにも便利な治療法です。さらに、腎臓のはたらきをまもるので、透析療法であると同時に、腎保護療法のひとつとして考えることもできるでしょう。
腹膜透析は自分の生活スタイルにあわせて透析療法ができるという点で、現在とても注目されている治療法です。血液透析にくらべて腎臓の働きをまもることができるという利点もあるので、 腹膜透析から透析療法をはじめることを提案します。
お腹には腹腔というスペースがあり、周囲を「腹膜」が包んでいます。ここに柔らかいシリコン性の細い管(透析カテーテル)を埋め込みます。この管を通して「透析液」を10分くらいかけて腹腔に注入し、その後一定時間(通常は4~8時間)透析液をためておくと、体に溜まっている毒素や余分な水分・塩分が透析液に吸い込まれていきます。 その後、透析液を捨て、次にふたたび新しい透析液をお腹に入れます。こうした操作を1日3~4回くりかえすことで体に溜まった毒素を取り除き元気に生活することができます。
1回の治療はだいたい30分前後で終了し、ふだんの治療は自宅で行うので、外来受診は月1回が基本となります。
ご自分で行うのは ①透析液が入っている袋のチューブと、からだについている透析カテーテルとを接続し、透析液を出し入れする②カテーテルの入っている出口周辺を毎日清潔にすることです。透析液の出し入れはそれほど難しくない操作ですが、機械を使って清潔に操作する方法もあります。
1日3~4回自分で透析液を交換するのが標準的な腹膜透析ですが(CAPDといいます)、なかには忙しくて一日4回の透析液交換も難しいというかたもいらっしゃるかもしれません。このような場合には夜間に機械を使って自動的に透析液を交換する方法もあります(APDといいます)。
APDでは、寝る前と朝起きた後の2回の操作だけですむので便利です。
腹膜透析は赤ちゃんからご高齢の方までほとんどの人ができる治療法です。例外として、腹腔内の感染、横隔膜に穴が開いている場合には腹膜透析はできません。
また、自分で行う治療ですから、清潔操作ができない人、他人任せが安心といった方にはお勧めしません。
世界中では10万人、日本では約1万人の方が腹膜透析を続けています。
日本で腹膜透析をうけているのは透析患者さん全体の5%未満に過ぎませんが、ヨーロッパの多くの国では透析患者さんの1、2割の方が腹膜透析を選択されています(デンマーク 24.7%、オランダ 25.6%、スウェーデン 22.4%など)。
日本ではどうして腹膜透析の普及率が低いのでしょうか。血液透析の施設が多いため、気軽に通院できること、反対に腹膜透析を実施できる医療機関、医療スタッフが血液透析にくらべて圧倒的に少ないことが最大の原因と考えられます。 聖路加国際病院は腹膜透析療法に関して長年の経験があり、腹膜透析に精通した医師、看護師がおりますので安心して腹膜透析をはじめていただけると思います。
腹膜透析の長所の一つは、時間をかけてゆっくり水や老廃物を取り除くため、身体に負担がかからない、優しい治療であることです。治療中に痛みや不快感がでることはほとんどありませんし、血液透析のように毎回治療のたびに針を刺す必要もありません。
自宅・職場でできるので通院回数が少なくてすみます。忙しくて週3回通院するのが難しいかたにとっては便利な治療法といえるでしょう。 あらかじめ宿泊先に「透析液」を配送しておけば国内だけではなく、海外旅行も可能です。
さらに、透析を開始してからも腎臓のはたらきを守る働きがあると考えられています。 血液透析では透析を開始してから数ヶ月で尿の量が減ってしまうことが多いのですが、腹膜透析では尿が出ている期間が長くなる傾向があります。 このため血液透析にくらべて食事制限がゆるく、とくにカリウムの制限はほとんどありません。
常にカテーテルがお腹に入っているので、清潔に保つ必要があります。
自分で透析液の交換、カテーテルのケアなどの操作をしなくてはなりません。
つねにおなかに透析液をいれているため腹膜炎になる危険がありますが、
日本の統計で発症する頻度は5年に1回以下と報告されていますからそれほど多いわけではありません。
自分の腹膜を使った透析療法なので、自分の腎臓の働きや腹膜の働きが低下すれば十分に老廃物、尿毒素を除去することが難しくなります。このため、5年前後で腹膜透析から血液透析に変更することが多くなっています。
食事制限が比較的緩やかといわれていますが、あくまで腎臓の働きが残っていることが前提です。腎臓のはたらきが低下し、尿量が少なくなると血液透析以上に厳密な塩分、水分制限が必要となるので、その時点で血液透析に移行することをおすすめしています。
透析の費用は1ヶ月あたり40万円前後かかりますが、人工透析を必要とする慢性腎不全の方は、健康保険の高額療養費制度で、「特定疾病療養受療証」あるいは「老人保健特定疾病療養受療証」を取得すれば自己負担限度額を1医療機関あたり月額1万円(高額所得者は2万円)にする制度があります。ただし当院に入院される場合には、差額ベッド代がかかることがありますのでご了承ください。
腹膜透析をはじめるには前もって透析カテーテルという細い管をおなかにいれる手術が必要です。手術後実際に使えるようになるまでは2~4週間必要なので、透析直前になってあわてて手術をするよりは、透析が必要になる3~6ヶ月前に余裕をもって手術をすることをお勧めしています。
実際に透析をはじめるときには、透析液の交換の方法や透析カテーテルの出口部のケア、食事療法などについて練習が必要です。聖路加国際病院では入院していただき腹膜透析に関してご指導いたします。入院期間は個人差がありますが、10~20日くらいが多いようです。
担当の先生とご相談し、腹膜透析が医学的に可能かどうかをおたずねください。医学的に可能であれば当院で腹膜透析を開始することができますので、診療情報提供書(紹介状)をつくっていただき、予約をおとりください。