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「透析療法が必要です」といわれると、今後の生活はどうなるのだろうか、仕事は続けられるのだろうか、つらい毎日になるのだろうか、など多くの不安をもたれることと思います。
透析療法は、日本で約25万人、人口500人に一人が透析療法をうけていることになりますが、大半のかたは元気に生活、活躍されているので、外からみても透析患者であるとはわかりません。それだけ確立した安全な治療法といえるのですが、「透析はつらい治療だ」「透析を始めると長生きできない」などの誤解がまだあるようです。
透析療法は、弱った腎臓の働きを補い、体にたまった毒素を取り除き、体調をととのえる、体力を回復する治療法です。 透析療法を続けるためには、食事制限をしたり、通院したりしなくてはいけないという点では健常人にくらべてハンディキャップはあるでしょう。しかし、適切な透析療法をうけることによって、ほぼ通常通り、健康なひとの生活に近い毎日をおくることができます。
透析療法について不安な点、疑問点があれば、遠慮せずに担当の医師や腎臓専門看護師にご相談下さい。
透析療法は体調をととのえ、元気に長生きするための治療法です。
「透析を始めるのは一日でも先延ばしにしたい」というお気持ちは十分わかりますが、透析が必要になった状態で、透析を先延ばしすることは、体が毒にさらされていることを意味します。なぜ透析が必要なのかを理解し、適切な時期に、安全に透析をはじめましょう。
透析療法を開始する時期は、尿毒症症状や身体所見、腎臓のはたらき(糸球体濾過値)、血液検査所見によって総合的にきめられます。
腎不全がすすむと体に毒素がたまってきますので、尿毒症という症状が出現します。食欲が低下したり、吐き気がでたり、息切れ、疲れやすさ、頭痛などの症状です。塩分や水分がたまると全身のむくみや、血圧上昇、さらに呼吸が苦しくなったりすることもあります。こうした症状が尿毒症によるものならば透析療法を開始します。
しかし、慢性腎不全はゆっくり進行することも多く、このような症状がほとんどみられないことがあります。そこで血液検査値も透析開始の目安になります。尿毒症の自覚症状がなくても、血液検査でクレアチニン、カリウム、リンの値が高くなったり、貧血が強い場合には、自覚症状が軽くても透析療法を開始したほうが体力を維持し、元気に長生きすることが期待できるでしょう。
そのため、体格、年齢、性別により個人差はあるものの、血清尿素窒素(BUN)が100mg/dl以上、血清クレアチニン値(Cr)が8~10mg/dl以上が続くとき、GFRが5~10ml/分/1.73m2以下などになったら透析療法を考えます。
血清カリウム値が高くなると不整脈や心停止の危険があるため、十分な食事療法、薬物療法をおこなっても血清K値が6未満にならなければ、血清クレアチニン値にかかわらず透析療法を考えます。
糖尿病の患者さんではBUN,クレアチニン値は低くても塩分、水分がたまりやすく、全身のむくみや心不全が出やすい傾向があります。このため、体調が悪くなってからあわてて透析を開始するのではなく早めに透析を開始するのが安全です。
いずれにしても検査所見はあくまで透析開始の目安ですので、最終決定は個別に決めなくてはなりません。担当医とよくご相談ください。