聖路加国際病院

St Luke's International Hospital

放射線科

放射線科のお知らせ

  • 読み込み中

医療行為実施時の放射線被ばくについて

放射線を用いる診療は、被ばくを伴いますが、詳細に身体の中を調べる事ができるため、病気の診断や今後の治療方針の決定に大きく役立ちます。また、可能な限り少ない線量にて検査していますので、身体に影響が出る事はほとんどありません。安心して検査をお受け下さい。なお、放射線診療を受ける方に対する説明は、当該診療を受ける者に対する診療の実施を指示した医師又は主治の歯科医師が責任を持って対応します。

【放射線被ばくによる影響】

放射線被ばくによる身体的影響は線量の増加に伴いリスクが上昇し、100mSv(ミリシーベルト)を超えると影響が現れてきます。身体的影響は、皮膚障害(紅斑、脱毛、びらん)、造血器障害などの急性障害と、白内障、不妊、発がんなどの晩期障害に分けられます。少量の被ばくでは、多くの場合は短時間のうちに回復し影響は残りませんが、一度に多量の被ばくをするとDNA(デオキシリボ核酸)の損傷が生じ身体に影響を与えることがあります。被ばく線量は、検査法や診療装置によって異なりますが、通常の放射線診療では100mSvを超えることはなく、放射線被ばくによる影響はほとんどありません。ただし心臓や脳などの血管内治療(IVR:画像下治療)では同じ部位を長時間あるいは短期間に繰り返し撮影することにより皮膚障害や目の障害を引き起こすことがあります。

放射線診療は、得られる医療情報による利益の方が被ばくによるリスクより大きいと判断される場合に行われます。検査を受けられるお子様に関しては、検査を繰り返しても医療被ばくが子どもの「発がん」「成長不良」「不妊」などの悪い影響を与える量に達することはほとんどありません。しかし、放射線は若い人ほど影響を受けやすいともいわれており、無駄な検査は避けるべきですので、医師によく説明を受けて、必要性が納得できたら安心して検査を受けて下さい。授乳中の方でも、放射線検査により放射性物質が体内に蓄積されることはありませんので、安心して母乳を与えてくださって大丈夫です。なお、通常に実施された多くのX線診断検査による出生前の被ばく線量では、出生前死亡・奇形・精神発達障害のリスクが増加して、自然発生率を上回ることはありませんが、当院では妊娠中もしくは妊娠の可能性がある場合は原則としてCT検査の適応外となりますので、事前にお申し出下さい。

放射線を用いた検査や治療では画質を担保した線量で実施することが重要であり、当院では、診断参考レベルと言われる医療被ばくの最適化に使用されている指標を用いて無駄な被ばくをしないように可能な限り低い被ばく線量で検査や治療ができるように努めるとともに、検査装置に搭載される様々な被ばく低減技術を用いて、放射線量の低減を試みています。さらに2ヶ月に一度、放射線科医・診療放射線技師・看護師により開催する放射線医療安全委員会にて、期間中のCT・血管造影・核医学の全検査を対象に被ばく線量をモニタリングし、被ばく線量の適正化と更なる被ばく低減を目指し撮影条件の設定を行っています。

*参考:診断で受ける放射線量

※この表はスクロールします

検査の種類 診断参考レベル 当院の標準体型における被ばく線量
一般撮影:胸部正面 0.4mGy(100kV未満) 0.06mSv
マンモグラフィ
(平均乳腺線量)
2.4mGy 1.38mGy
透視 IVR: 透視線量率 17mGy/分 胃の透視4.2-32mSv程度
内視鏡的逆行性胆道膵管造影 170mGy程度
歯科撮影 下顎 前歯部1.0mGyから
上顎 大臼歯部2.0mGyまで
(いずれも入射空気カーマ[Ka.i][mGy])
2-10μSv程度
CT検査(頭部) 成人:頭部単純77mGy(CTDIvol)
小児(5~9歳):
頭部55mGy(CTDIvol)
36mGy程度
CT検査(体幹部) 胸部~骨盤1相 16mGy
冠動脈 66mGy
5.78mGy程度
CT検査(冠動脈) 18.7mGy程度
血管造影(頭部) 成人心臓領域の診断カテーテル検査: 700mGy
肝動脈化学塞栓療法(TACE): 1400mGy
 
400mGy程度
血管造影(胸部) 190mGy程度
血管造影(腹部) 1000mGy程度
血管造影(上肢) 20mGy程度
成人 脳血流
シンチグラフィー
(Tc-ECD)
投与量600MBq
放射線医薬品ごとの値 約4-5mSv
成人 心筋血流
シンチグラフィー(Tc-TF)
投与量1009MBq
放射線医薬品ごとの値 約7-8mSv
成人 骨
シンチグラフィー
(Tc-MDP)
投与量740MBq
放射線医薬品ごとの値 約4-5mSv
小児 副腎髄質
シンチグラフィー
(I-MIBG)体重14kg
投与量100MBq
放射線医薬品ごとの値 約2.6mSv
成人 全身
シンチグラフィー検査
(F-FDG)投与量185MBq
放射線医薬品ごとの値 約7-8mSv
PET検査 放射線医薬品ごとの値 2-20mSv程度

出典:「放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料(令和3年度版)」「Japan DRLs 2020」より

※)放射線の単位「mGy」は、放射線を受けた物質が吸収したエネルギー量を表す単位です。
「mSv」放射線の量を人体への影響の大きさで表す単位です。
「mSv」を正確に算定するためには専門的な知識が必要となりますが、一般的に位は「mGy」と「mSv」は、ほぼ同じであると考えて問題ありません。

トップへ