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脳腫瘍
脳腫瘍の中で、血管に富んだものは血管内治療の対象となります。一番多い目的は、外科的摘出術の前に、血管内治療によって腫瘍への血流を減らして、手術中の出血を少なくすることです。血管内治療に合併症の危険性がないわけではありませんが、少ない危険性の血管内治療を行うことにより、摘出手術中の出血を減らして、手術の安全性と成功率を高めることができます。また、良性腫瘍の場合で、患者さんが高齢であったり、全身の病気があったり、または腫瘍が手術の難しい場所にあったりして、摘出術の危険性が非常に高い場合には、血管内治療のみを行って、腫瘍を縮小させたり、症状を軽快させたりすることもあります。
血管内治療が最もよく行われる脳腫瘍は、髄膜腫です。これは脳を覆っている膜から発生する腫瘍でほとんどが良性です。この腫瘍は、脳の膜(硬膜)を栄養する血管から栄養されることが多く、この血管は脳に行かないので比較的安全に血管内塞栓術で閉塞させることができます。危険性としては、脳神経を栄養する血管が硬膜の中を通っているので、その閉塞による脳神経麻痺が大きなもので、視力障害、眼球運動障害による複視、顔面の運動知覚障害、嚥下、発声障害などがあげられます。そのため、血管解剖をよく検討して経験のある術者によって行われることが大切です。その他の危険性として稀ながら脳梗塞や脳出血もあり得ます。髄膜腫の次に血管内治療がよく行われる脳腫瘍は血管芽腫です。これは脳内にできる良性腫瘍ですが、非常に血管に富んでいることが多く、大きな腫瘍では摘出術の前に血管内塞栓術を行うと手術が容易になります。悪性腫瘍では、血管に富んだ転移性腫瘍が最も多く、脳原発の悪性腫瘍である神経膠芽腫などに関しては、栄養動脈からの抗がん剤による化学療法の可能性がありますが、血管内塞栓術は一般的には行われません。