当院では、救急医療の機能を測る指標として「救急車受入台数」を採用しています。この「救急車受入台数」は、「当院への救急車受入要請件数」×「当院の受入率」で算出されます。2007年度は、当院の位置する東京都中央区内で、約15,000回、救急車が出動しました。その半数以上が、当院に受入を要請してきています。中央区外からの要請が加わり、2007年度は当院に約11,500件の要請がありました。この数値は年々増加する傾向にあります。これは、当院が受入台数を増やすと、それに伴って要請件数も増える、というスパイラルに入っているためと考えられます。
しかし残念ながら、要請された救急車を全て受入れられるわけではありません。最近マスコミをにぎわす、いわゆる「たらい回し」(ほんとうはたらい回しではなく「搬送先選定困難」)も残念ながら起こり得るのが実情です。東京消防庁によると、1人の救急患者の搬送先を決めるために5回以上電話をかける、あるいは30分以上を要する「選定困難」の割合は、6.5%にのぼります。この傾向は、大都市で顕著です。
「救急車受入台数」は、救急部だけの努力で改善できる指標ではありません。救急診療を担当する医療者の人数、診療の効率化、入院を受け入れる病棟看護師や各診療科の協力など、さまざまな要素が関わります。当院が地域での役割を十分理解して活動する限り、今後数年間は救急車受け入れ件数は増加して行くことが予想されます。