聖路加国際病院

St Luke's International Hospital

消化器・一般外科

消化器・一般外科のお知らせ

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胃疾患

内視鏡手術

内視鏡とは食道、胃などの中をのぞく道具でいわゆる胃カメラのことです。
胃がんやGISTの診断のみならず、治療にも使われます。病変のひろがりが浅くて小さい場合には内視鏡を使用して治療します。

腹腔鏡手術

内視鏡手術では取り切れない病変に対して行われます。お腹の中を腹腔鏡という内視鏡の一種で覗きながらおこないます。
当院では胃がん・GISTの患者さんの手術の8割以上をおなかに5-6か所の小さな孔を開けて行う腹腔鏡手術で行っています。最大のメリットは身体への影響が少ないことです。従来のお腹を広く開けて行う手術(開腹手術といいます)と比べ、痛みが少なく、早く歩けるようになる、腸の動きの回復が早い、出血量が少ないなどの利点があります。当院の術後入院期間は約10日です。

機能温存手術(残せる胃は残す)

通常の胃の手術のあとにはいろいろな後遺症(もたれ感や消化不良、食事の逆流、体重減少など)が見られるために、これを少しでも少なくすることが必要です。すなわち、手術の際に残せるものは残して胃の持っている機能を温存し、手術後の生活の質(QOLといいます)を向上させる機能温存手術が重要であるといえます。
特に、従来は胃を全部とることが必要であったような病変でも、胃を温存する術式を追求してなるべく胃を残すようにしております。
当院では、個々の患者さんの全身状態や年齢、希望などさまざまな因子を考えあわせて治療方法を相談して決めていきます。

胃がんに対する機能温存手術

噴門側胃切除(胃の口側のみの切除)

胃亜全摘手術

胃GISTに対する機能温存手術

GISTの場合はがんと異なり原則的に病変のみを摘出し、胃をほとんど残すことが可能です。胃の形が変形しないように手術を行うことが重要です。

胃の手術を受けるための準備

胃がんに対する手術は、上腹部に傷が出来るため、呼吸のたびに疼痛を感じ呼吸機能に大きな影響を及ぼすことがわかっています。また、術後の回復には必要な栄養を摂取することが重要ですが、胃が小さくなってしまうため、術後早期には十分な栄養を摂りにくいことも問題となります。
そのため、手術の負担を減らし、回復を促進するために、手術を受けることが決まった時点から予め準備することが重要です。
具体的には、栄養の状態を整える「栄養強化療法」や、筋肉を鍛える「運動療法」、呼吸の状態を整える「呼吸療法」を、専門家の指導を受けながら行って頂きます。
当院では外科医だけでなく、麻酔科医・看護師・栄養士・理学療法士・言語聴覚士らの専門家がチームとなって、手術の前から患者さんをサポートする体制を整えています。

聖路加国際病院で受けられる胃外科治療の特徴

当院には外科医だけでなく、内科医も麻酔科医も一流の専門家が揃っています。患者さんにとって適切な医療を提供できるよう、専門家が個々の患者さんに寄り添って治療法を提案・実施しています。
また、看護師・栄養士・理学療法士・言語聴覚士・ソーシャルワーカーなどの専門家も、入院・手術の前から、入院中・退院後も一丸となって療養生活をサポートしています。

 

年齢・心臓病など他の病気のために「手術・治療が実施できない」と言われた方であっても、当院では可能な場合もあります。
まずはお気軽にご相談下さい。

その他、当院におきましては先進的な医療にも積極的に取り組んでおります。

当院で行われている先端的医療の取り組み

全国の主要施設が参加する、スキルス胃癌に対する医師主導治験に参加しています。

スキルス胃癌を対象とした腹腔内化学療法

引用元:スキルス胃がんの新しい治療(東京大学医学部附属病院)

スキルス胃癌とは

  • 胃癌には様々な形のものがありますが、はっきりとした潰瘍やその周りの盛り上がりがなく、胃の壁が硬く、厚くなるタイプの進行胃癌を4型胃癌(スキルス胃癌)といいます。
  • 他のタイプの胃癌と比較して、若い方や女性に多く、腹膜への転移(腹膜播種)を起こしやすいという特徴があります。
  • 腹膜播種がなく、手術で切除できた場合でも、腹膜に再発する危険が高いことが知られています。

内視鏡検査(左)やバリウム検査(中)では、胃の膨らみが悪く、胃の表面のひだが太くなっています。CT検査では胃の壁が厚くなっています(右)。※カーソルを合わせると画像が拡大されます。

スキルス胃癌の治療

  • 腹膜播種を抑えることが特に重要です。しかし、スキルス胃癌のための特別な治療法は確立されていないため、他のタイプの胃癌と同じように治療されています。
  • 腹腔洗浄細胞診陰性*の場合は、まず胃を切除し、術後に化学療法を行う方法が一般的です。
  • 腹腔洗浄細胞診陽性*の場合は、①胃を切除して術後に化学療法を行う方法、②初めに化学療法を行い、その後に胃を切除する方法、③化学療法のみを行う方法があります。

(*お腹の中を生理食塩水で洗い、回収した液を顕微鏡で調べる検査を腹腔洗浄細胞診といい、癌細胞が見付かった場合を細胞診陽性、見付からなかった場合を細胞診陰性といいます。)

スキルス胃癌の新しい治療

抗癌剤をお腹の中に直接注入する腹腔内化学療法により腹膜播種を強力に抑えることが可能となり、スキルス胃癌の治癒につながることが期待されます。
聖路加国際病院におきましては、2020年9月よりスキルス胃癌に対する腹腔内化学療法の効果を確認するための治験を実施します。

4型進行胃癌に対する術後または周術期補助化学療法としての全身・腹腔内併用化学療法と全身化学療法の無作為化比較第Ⅲ相試験

目的

手術後の腹膜播種の危険性が高いスキルス胃癌の患者さんを対象として、術後または術前術後に化学療法を行い、全身・腹腔内併用化学療法が標準的な全身化学療法より再発を抑える効果が高いかどうかを調べることを目的としています。

評価項目

胃癌が再発するまでの期間、生存期間、腹膜に再発するまでの期間、副作用などを評価します。

対象患者

腹膜播種や肝転移などの転移がなく、胃の切除が可能な75歳以下のスキルス胃癌の患者さんを対象としています。腹腔洗浄細胞診の結果は問いません。

試験の方法

患者さんを標準的な全身化学療法と新しい全身・腹腔内併用化学療法に無作為(ランダム)に振り分け、治療の効果と副作用を比較します。
3年間で300名の患者さんにご参加いただき、3年間経過を観察した後に結果を解析します。

  • まず審査腹腔鏡を行い、腹膜播種がなかった場合にこの治験の対象となります。(審査腹腔鏡とは、全身麻酔下に腹部に穴を開け、腹腔鏡というカメラでお腹の中を観察する検査です。)
  • 審査腹腔鏡の最中に腹腔洗浄細胞診を実施し、細胞診陰性の場合は胃切除術を行い、取りきれた後に治療法を決定します。細胞診陽性の場合は胃切除術は行わず、治療法を決定します。
  • 患者さんに全身化学療法または全身・腹腔内併用化学療法のどちらを受けていただくかは無作為に決定され、患者さんも担当医も選ぶことはできません。
  • 腹腔洗浄細胞診陰性の場合は胃切除術 → 化学療法(21週間)、腹腔洗浄細胞診陽性の場合は化学療法(9週間)→ 胃切除術 → 化学療法(21週間)の順に治療を進めます。
  • 定期的にCT検査等を実施し、胃癌の再発の有無を調べます。

引用元:スキルス胃がんの新しい治療(東京大学医学部附属病院)

研究代表者:石神 浩徳(東京大学医学部附属病院 外来化学療法部)
当院責任医師:鈴木 研裕 (消化器・一般外科)
予定期間:2020年7月~2026年6月
実施施設:全国40施設(予定)
参加人数:300名、うち当院3名

この治験は、東京大学医学部附属病院の研究費とクラウドファンディングにより広く法人や個人から集めた寄付金により実施します。腹腔内投与に使用するパクリタキセルは日本化薬株式会社より提供されます。

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