聖路加国際病院

St Luke's International Hospital

泌尿器科

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前立腺がんとは?

前立腺は男性にしかない臓器で、膀胱直下で尿道を取り囲む形で存在します。前立腺は精液の一部を生成したり、尿道と精液が通る射精管が前立腺内で合流したりと、男性生殖機能と密接に関係します。

前立腺に癌(悪性腫瘍)ができることを前立腺がんといいます。

前立腺がんは2018年度の男性部位別がん罹患率(1年間で新しく診断された癌の数)第1位で、癌の中では非常に多いです。

2018年度の男性部位別癌罹患率
部位 罹患者数 全部位罹患数の
中の割合
第1位 前立腺がん 92,021 16.5
第2位 胃がん 86,905 15.5
第3位 大腸がん 82,046 14.7

引用:厚生労働省 平成30年 全国がん登録罹患数・率報告

診断

PSA(前立腺特異抗原)

PSAとは、血液検査で測定できる前立腺がんの腫瘍マーカーです。

健診や人間ドックにてPSAが高いといわれ泌尿器科を受診されます。PSAが4.0ng/ml以上(年齢によっては3.0や3.5であったりすることもあります)で泌尿器科受診が推奨されております。

PSAの値は前立腺肥大症や前立腺炎などの良性疾患でも高値を示すこともあり、PSAの値が高いと前立腺がんというわけでもなく、鑑別の一つです。

内服薬には、PSAを下げてしまうもの(アボルブ®、ザガーロ®、プロスタール®、プロペシア®などの処方薬など)があり、結果として前立腺がんの発見を遅らせてしまう可能性があり、注意が必要です。

画像検査(前立腺の局所評価)

PSA高値の方に対する精査として行っているのがMRI検査です。画像検査は外来で行える検査で、がんが疑われる箇所が存在するのか、さらにその箇所が前立腺内のどこにあるのかを調べるのに有用です。MRI画像は一般的にPI-RADS(Prostate Imaging Reporting and Data System)スコアが使用されており、より正確に癌を検出することができます。PI-RADSスコアはMRI画像をもとに5段階で癌らしさを判定(1点:がんの疑いは極めて低い、2点:がんの疑いは低い、3点:どちらとも言えない 4点:がんの疑いがある 5点:がんの疑いが強い)するものです。

前立腺針生検

PSA値と画像検査だけでは前立腺がんと診断することはできません、最終的には癌組織を確認して初めて癌の診断となります。前立腺癌が疑わしい場合は、前立腺針生検(前立腺に針を刺し、組織を採取)し、検体を病理組織検査にて癌細胞の有無を確認し、診断します。

当院では基本的に経会陰式前立腺針生検を全身麻酔下で手術室にて行っており、1泊2日の入院としております。会陰部というのは、陰嚢と肛門の間(脱毛などで言われるVIOのIラインの箇所)です。麻酔での生検が行えない方には、経直腸前立腺針生検(痛み止めのみで経直腸超音波に沿って直腸から針で生検する)を行うこともできます。

当院では、針は基本16〜18本採取しており、病理検査は次回外来で説明します。

病理検査では、がんの有無のみでなく、がんの悪性度(がんの顔つき)をグリソンスコアにて分類します。

グリソンスコアでは生検針1本ごとに組織がその形態によりパターン1〜5で分類(高い方が悪い)され、その検体の中で最も多いパターン+2番目の多いパターンの合計(1+1=)2~(5+5=)10で点数化します。基本的にはグリソンスコア(3+3=)6以下は低リスク癌、7点が中等度リスク癌、8点以上は高リスクがんとしております。

前立腺癌の診断がついたところで、他臓器への遠隔転移(癌細胞が血流にのってほかの臓器に病巣を作ってしまうこと)やリンパ節転移(リンパ節にがん細胞が飛んでいき定着すること)の有無について調べるステージングを行っていきます。

ステージング(全身の画像検査)

現在使われているステージングはTNM分類というもので、T(tumor):原発腫瘍浸潤、N(lymph node):所属リンパ節転移、M(metastasis):遠隔転移で、各それぞれの項目で分類し、ステージングします。

前立腺がんの診断がついてからステージングのために、胸~骨盤のCT検査、骨シンチグラフィー検査を行います。これらは外来で行える検査で、時間はCTで30分程度、骨シンチグラフィーは半日頂きます。

TNMのT(原発腫瘍)分類
T1 触知不能・画像診断不可能で偶発的に見つかった腫瘍
(限局癌)
T1a:組織学的に切除組織の5%以下の偶発的に発見される腫瘍
T1b:組織学的に切除組織の5%をこえる偶発的に発見される腫瘍
T1c:針生検により確認される腫瘍
T2 前立腺に限局している腫瘍 T2a:片葉の1/2以内の進展
T2b:片葉の1/2以上を超えるが、両葉には及ばない
T3b:両葉への進展
T3 被膜をこえて進展する腫瘍 T3a:被膜外への進展する腫瘍
T3b:精嚢に浸潤する腫瘍
T4 周囲臓器に浸潤している腫瘍 精嚢以外の隣接臓器へ浸潤する腫瘍
TNMのN(所属リンパ節)の分類
N0 所属リンパ節転移なし
N1 所属リンパ節転移あり
TNMのM(遠隔転移)の分類
M0 遠隔節転移なし
M1 遠隔
転移節
転移あり
M1a:所属リンパ節以外のリンパ節転移
M1b:骨転移
M1c:リンパ節・骨以外の転移

(日本泌尿器科学会,日本病理学会,日本医学放射線学会, 前立腺癌取扱い規約第4版)

前立腺がんのリスク分類

転移のない前立腺癌に対してのリスク分類として、NCCN分類があります。

それぞれ、低・中等度・高リスクに分類されますので、その各々で外来主治医と一緒に適切な治療選択を検討します。

NCCN
分類
PSA(ng/ml) Gleason Score TNM分類のT
低リスク ≦10 ≦6 T1〜T2a
中等度リスク 10~20 7 T2b~T2c
高リスク 20< 8~10 T3a〜

低リスクはすべての条件を満たすことが必要で、高リスクは1因子でも満たせば、高リスクとなります。

(日本泌尿器科学会編「前立腺癌診療ガイドライン 2016年版」)

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