聖路加国際病院

St Luke's International Hospital

小児科

小児科のお知らせ

摂食障害

外来診療日

初診
再診
(2~4回目)
水曜 9時30分~ 初回面接 4時間
2~4回目 2~3時間
金曜 9時30分~
再診
(5回目以降)
火曜 午後の「精神分析の診療」
金曜 午後の「精神分析の診療」
5回目以降 50分

摂食障害では身体面の評価(身体所見、血液検査)とは別に、心理的な治療として、“本人の洞察的な面接”と“親御さんへの精神分析的観点からのガイダンスを行っています。1回につき3時間の診察・面接は保険診療で賄える範囲を超えてしまいます。当科では必要な面接時間を確保するため、保険診療に加えて『選定療養の予約料』を徴収させていただいております。

初回から4回まで約12時間の面接において、摂食障害のタイプや重症度の判定の他、生育歴、家庭や学校の状況、治療方針の説明などを行います。担当医は小児科専門医、精神保健指定医、公認心理師であり、精神分析的精神療法(心の深層を探索的に扱う精神療法)を行っております。

摂食障害の診療(3時間) 11,000円、 精神分析の診療(50分) 3,300円

初診をご希望される方へ

摂食障害の初診、または、セカンドオピニオンをご希望される方は担当医(深井)までご連絡ください。
お電話で緊急度と外来予約枠、入院病床の空き状況によりご相談させていただきます。

初診時にお持ちいただく物(4点)

①前医からの紹介状と検査データ
②小学1年からの身体測定の記録
③母子手帳
④「心身症・摂食障害初診時問診票

摂食障害について

摂食障害とは、身体的な病気(胃腸疾患、脳腫瘍など)が無いにも関わらず、『食べられない状態』の総称です。 小児の摂食障害のうち半数が『神経性やせ症(いわゆる拒食症)』で意図的なダイエット(摂食量の制限や過度な運動など)を伴います。

神経性やせ症
(拒食症)
摂食制限型:
意図的なダイエット(食事摂食の制限、過度な運動など)により体重が減少する。小児の摂食障害のうち半数を占める。
過食・排出型:
食事の摂取量は少ないが、意図的な嘔吐や下剤の大量使用をする。小児の初発では極めてまれ。
食物回避性
情緒障害
ダイエットをしていないが、腹痛、嘔気などの症状のため、食事摂取が減少しやせていく
神経性過食症
(過食症)
拒食症のあと、過食衝動が抑えられなくなり、通常より多量の食事を食べる。食後に意図的な嘔吐や下剤の大量使用をする。
嘔吐恐怖症
(機能性嚥下障害)
「嘔吐してしまうのではないか」、「喉に詰まってしまうのではないか」という不安のために食べられない。食事を口に入れても、飲み込めず、長い時間噛んだあと吐き出してしまう。
機能性嘔吐症
(噴門弛緩症)
(胃食道逆流)
意図的な嘔吐ではないのに、食後すぐに胃から喉に食物が逆流してきて吐いてしまう。急激な脱水を来すことがある。
(精神的なストレスで誘発されるため、「心因性嘔吐」ともいう)
選択摂食
(極端な偏食)
幼児期からはじまり、限られた食品しか食べられない。
(身長は低めだがやせてはいないことが多い)
異食症 食物ではないもの(紙、髪、砂など)を食べる癖

入院基準について

標準体重(同じ性別、同じ年齢、同じ身長の子どもの平均体重)に比べてどのぐらい痩せているか(%標準体重)に加えて、最近の4~8週間の痩せの進行速度を加味して入院基準が変わります(表参照)。
摂食障害の重症度と入院適応の基準: (小児心身医学会ガイドラインを一部改編)

重症度 標準体重との比較 入院の基準
標準 80%以上
120%以下
軽症 75%以上
80%未満
75%以上だが、直近の8週間に8㎏以上の減少
中等症 65%以上
75%未満
65%以上だが、直近の4週間に4㎏以上の減少
重症 55%以上
65%未満
早期の入院が必要
超重症 55%未満 緊急入院が必要

入院時の個室料について

当院小児科には大部屋と個室がありますが、摂食障害の入院治療ではベッドサイドでの本人面接を行うこと、他患者との比較を避けるため個室での治療となります。そのため、個室料金(差額ベッド代11,000円/日)がかかることをご了承ください。

神経性やせ症(拒食症)の治療法について

英国の厚生労働省にあたるNICEが作成した国際的なガイドラインでは、拒食症について成人と小児・思春期で異なる治療を推奨しています。

成人 第1選択 摂食障害に強化した認知行動療法(CBT-E)
モーズレイモデルの神経性やせ症治療(MANTRA)
摂食障害専門家による支持的マネージメント(SSCM)
第2選択 摂食障害に焦点づけた力動的精神療法(FPT)
小児 第1選択 神経性やせ症に焦点をあてた家族療法(FT-AN)
第2選択 摂食障害に焦点化した認知行動療法(CBT-E)
思春期心性に焦点をあてた心理療法(AFP-AN)

定常体重設定による精神分析的精神療法(力動的精神療法):定常体重療法

当科の治療は「思春期心性に焦点をあてた心理療法(AFPーAN)」と同じ観点から心理面接と親ガイダンスを行っています。お子さんが思春期を迎えると、自分でも気づかない心の奥に大人からの独立したい気持ちが出てきます。一方で、大人に依存したまま安全で楽な状況にとどまりたい気持ちもあります。摂食障害はこのような心理構造が変化することが大きな要因であると考えます。さらに、親子関係、学校関係、本人の性格(完璧主義や隠れた発達障害)など様々な要因が複合的に組み合わさり発症します。親の育て方が原因ではない場合でも、治療には①家族の関係性が変化、②お子さんの心が成長する必要があります。そのために、思春期の心理的変化と各段階に応じた親子関係(親子の距離感)について洞察的、探索的な面接を行っています。認知行動療法や家族療法では「なぜ摂食障害という表現に至ったか」という発症原因をあえて扱わない治療法ですが、再発することが少なくありません。精神分析的精神療法は親子のパワーバランスを中心に「なぜ摂食障害という表現に至ったか」を探索することで再発しない治療を目指しています

定常体重療法について

摂食障害の患者さんは摂取カロリーや運動量などに「とらわれ」や「こだわり」があるため、心を探索する心理療法が困難だといわれています。そして、患者さんの「体重増加への拒否感」(やせ願望・肥満恐怖)と、ご家族の「生命の危険への不安」が、「食べる・食べない」の親子間攻防となりがちです。一般的な治療では、医療機関の受診後も患者と医師との間で「食べる・食べない」の攻防が引き継がれます。外来診療では体重減少が止まらす、入院して行動を制限され体重を増やすように強いられ、食べないと経鼻経管栄養チューブ(1日3回)を行う治療が一般的です(経管栄養チューブを抜いてしまう場合は精神科で身体拘束をすることもあります)。
しかし、摂食障害の本題は「食べる・食べない」はではなく、「主体性の確立」という目的があると考えます。親の属国(植民地)であった子どもが、独立国家になるための反抗期が、「食べる・食べない」という歪な形となっているケースが少なくありません。そのため当科の入院治療では、①食事の配膳を一旦停止し、②輸液療法(中心静脈カテーテル)により体重が増えも減りもしないカロリーを投与しています。これにより、親子ともに体重にこだわることをから解放されます。同時に、点滴による24時間持続的な栄養供給により飢餓状態に伴う異常な心理状態からも脱することができるため、発症に至った根本的で複合的な原因を探索すること(力動的精神療法)が可能となります。

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