聖路加国際病院

St Luke's International Hospital

小児科

小児科のお知らせ

小児がん・血液疾患の診療について

小児病棟(6階東病棟)

小児病棟プレイルーム

当科は小児がんおよび血液疾患の診療に取り組んでおります。その歴史は、1960年に米国ボストン小児病院で学んだ西村昻三氏が小児がん患者の診療を開始したことに始まります。1980年には、米国MDアンダーソンがんセンターで経験を積んだ細谷亮太氏が、患者とその家族に対して医療者、非医療者を巻き込んだトータル・ケア(病気など身体的ケアのみならず、患者さんとそのご家族の心理面・社会面も含めた包括的ケア)を展開しました。今も先人たちの意志を受け継いで、小児がんおよび血液疾患の治癒を目指しております。現在は、小児がん・血液疾患を専門とする常勤医5名、がん化学療法認定看護師、小児心理士、保育士、チャイルド・ライフ・スペシャリスト、医療ソーシャルワーカーなど様々な職種が連携し、こどもに優しい療養環境作り、入院中の集団保育、学校や医療費など社会的・経済的な問題の解決など、トータル・ケアを実践しています。また、院内家族会とも積極的に連携しております。

小児がん(白血病や悪性リンパ腫などの造血器腫瘍、神経芽腫、脳腫瘍など)については日本小児がん研究グループ(JCCG)に所属し、わが国での標準治療の確立と向上に向けて多施設共同臨床試験に参加しています。

単に「治る」だけではない質の高い「治癒」を目指し、1980年代より告知に取り組むと同時に長期フォローアップ体制の充実を図ってきました。小児がんとはじめて診断されたときだけでなく、治療終了後おおむね5年経過したタイミングで、主治医からあらためて本人に病気の説明を行い、卒業証書と治療サマリーをお渡しています。長期フォローアップとしては、治療終了後おおむね5年経過したころから年1回受診し、全身の身体所見の他、晩期合併症の評価、就学や就労の問題のサポートを含む集学的な診療を行っています(人間ドックシステムを用いた小児がん患者の長期フォローアップの試み)。また、総合病院の特徴を活かし、成人専門診療科による合併症への対応を迅速に行うことが可能です。

小児血液疾患(再生不良性貧血、遺伝性骨髄不全、血友病、血小板減少症、各種貧血など)に対する診療も精力的に行っており、造血細胞移植を必要とするような症例にも対応しています。血友病については関東甲信越ブロックの地域中核病院として止血管理だけでなく、整形外科、リハビリテーション科、口腔外科と密な連携をとり包括的診療を行っています。

当院の詳細な医療体制や、診療実績等につきましては、東京都保健医療局のホームページ内の以下の公開情報をご参照ください

https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/iryo/iryo_hoken/gan_portal/hospital/class/shouni_hospital/index.files/04_seiroka.pdf

当院で小児がんの入院治療を検討中の方へ ― 聖路加国際病院小児科の特徴 ―

1. 多数の小児がん専門スタッフによる充実した診療体制

当院小児科は小児がんを専門とする常勤医5名体制で診療を行っております。これは東京都内でも屈指の人数となります。さらに常勤の小児外科医が2名おり、様々な種類の固形腫瘍に対する外科的治療にも対応できます。高校生年代の発症でも小児の治療方針が治癒率を上げる場合があり、各成人専門診療科と迅速に連携して診療を行えることも総合病院である当院の強みです。

2. ご家族の負担が最小限となるように努めております

当院ではご家族の常時付き添いを要さない大部屋での管理を中心としています。

  • お子さんが病院に慣れるまで付き添いを希望される場合などは、個室でご家族が付き添われての入院も可能です(利用状況によっては個室をご提供できない場合もあります。個室利用の際は原則として差額ベッド代がかかります)。
  • 肺炎など感染のリスクがあるような疾患のお子さんとは同室にならないようにしております。
  • ウイルス性疾患が疑われる場合等、一時的に個室への移動をお願いする場合があります。この際は、お子さんの年齢によってはご家族の付き添いをお願いしております。

3. 治療中もできるだけ制限のない日常生活を送ることができるように努めております

化学療法などの治療により免疫力が低下する時期が定期的に来ます。当院では、感染リスクがある疾患のお子さんと同室にしないなどの環境調整を行うことで、免疫抑制時も個室内隔離などを強いることはせず、成長の糧になる日常生活の経験をできるだけ制限しないようにしています。

4. お子さんが入院生活の中でも成長する存在であることを意識して、様々な取り組みを行っております

1)こども医療支援室

小児病棟には医師と看護師、看護助手の他に、「こども医療支援室」に所属する以下の職種が勤務しており、子どもの視点に立って入院生活をサポートしております。

  • チャイルド・ライフ・スペシャリスト
  • ホスピタル・プレイ・スペシャリスト
  • 保育士
  • 小児心理士

2)具体的な取り組み(詳細は、こども医療支援室のページもご覧ください)

●設定保育

0~6 歳の未就学児、プレイルームに集まることができる状態の子どもが対象です。
始まりと終わりを意識した時間枠の中で、製作、手遊び、絵本の読み聞かせなどを行う保育です。保育園・幼稚園のように集団での活動を通して、乳幼児の子ども同士の関わりや遊びを保障し、発達を支援していくねらいをもっています。

●音楽療法

週に一回、当院の緩和ケア病棟に所属している音楽療法士さんが、保育士とともに行います。リクエストに応える電子ピアノの演奏や気分・体調に合わせた選曲で、子どもたちにもできる楽器を使って一緒に演奏を楽しみます。

●学生ミーティング

小学生以上を対象に週1回開催しています。一緒に遊ぶことで同じ経験をしている仲間たちと出会い、絆を深めるきっかけとなるだけではなく、入院生活のルールについて話し合うことで主体性を持って治療に取り組む経験となったり、一緒に考えた行事の企画が実現することで自己コントール感を体験する機会となったりするなど、子どもたちにとって貴重な場になっています。

●AYAカフェ

中学生以上のお子さんを対象に開催しています。年少児に気を遣わず、難易度の高いゲームで体感する年齢相応の達成感や、思春期だからこそのお話ができる時間を設けています。
退院後は、専門外来日の時間に合わせて、訪問学級(つばさ病院訪問学級)の教員が”つばさカフェ”として教室を開放し、訪問学級に関わったお子さんが立ち寄って交流できる場所を作っています

●季節の行事

入院中であっても、季節を感じる経験は子どもの成長に欠かせません。
年間を通し様々なイベントを企画・運営しています。
家族とともに楽しむ機会となるよう、一部のイベントはお子さんのきょうだいも参加可能です。

  • 夏祭り(庭園でヨーヨー釣りなどの出店もあります)
  • 花見・ピクニック(小児外来まえの広場)・ハロウィーンパーティー(子どももスタッフも朝から仮装。栄養課さんが子どもたちのリクエストに応えてくれたバイキングの後、暗くなった夜の病院内を探検します)
  • クリスマス会(本物のサンタさんが外国からくることも!)
  • その他:餅つき・節分・ひな祭り・七夕等

5. できるだけ本人に身体的・精神的負担をかけないよう配慮しています

処置や検査などお子さんにとって少し「こわい」ことがあるとき、チャイルド・ライフ・スペシャリストと協働し、わかりやすい説明や疑似体験により心の準備をする「プレパレーション」を行いお子さんの不安を軽減します。怖い・痛いなどの医療トラウマと言われる体験が終わった後は、気分転換となる「ディストラクション」や達成したことを評価して自己肯定感を高めるサポートを行います。

また、長期入院が必要となる病気と診断された際は、お子さんの理解度に合わせて作成した説明資料(小さいお子さんの場合は右記のような紙芝居)を用いて、「なんで病院にいるの?」「どうして治療をしないといけないの?」などの疑問に答えるようにしています。

6. きょうだい支援にも力をいれています

小児がんと診断され入院治療を受けるお子さんのきょうだいも、多くの不安やストレスが生じると考えられます。きょうだいも子どもであり、わからないことが続く生活はトラウマになりかねません。

当院では病気のお子さんの入院からできるだけ早いタイミングできょうだいに来院していただき、「きょうだいイベント」という個別のきょうだい支援を行っています。治療チームの一員であるきょうだいに、この日は主役になって頂き、病院でのきょうだいの支援者を知ってもらう機会にしています。原則的に小学生以下は小児病棟に入れませんが、このイベントの日は特別に病棟内に入ることができます。

「きょうだいイベント」は主に以下のような流れで行っております。
担当医からの病気の説明 → きょうだい支援チームによる病棟案内 → 入院中のお子さん、保護者、きょうだい水入らずでプレイルームや個室で過ごす

7. 小学生以上のお子さんは学習の継続ができます(つばさ病院訪問学級)

当院では入院治療中であっても学習活動を中断させることがないように支援を行っています。小学生から高校生までを対象に、東京都立墨東特別支援学校の訪問教育が受けられます(授業を受けるには、転学手続きが必要です。退院したらもとの学校に戻ります)。一人一人の体調や治療スケジュールに合わせて、院内にある「つばさ教室」や病室において学習することができます。授業は、もとの学校と連携をとり、学習進度を確認して進めています。一対一の個別学習のため、入院前は勉強が苦手であった子どもであっても理解が進み、退院時には学習意欲が向上している場合もあります。また、希望に応じて入院中も同級生とつながっていられるように、作品交流やオンラインでのやり取りなどの”つながり支援”を行っています。入院中は治療や検査、リハビリ等の時間の制約がありますが、子どもたちにとって授業を受けることは学習の継続だけではなく、病気とは関係のない居場所として心の安定につながるという大きな意味をもっています。

退院が決まり、復学する際には、お子さんとご家族が安心して学校生活を送れるように、事前にもとの学校と病院の関係スタッフおよび特別支援学校教員との間で会議を行っています。

8. その他

入院中にお困りのことなどが生じた場合、様々なスタッフがサポートいたします。入院中の小児がん患者さんには原則として医療社会事業科のソーシャルワーカーが担当し、各種助成や手続きなどの社会資源のご案内や、学校や保育園との調整などをお手伝いさせていただいております。

治療終了後、成人になった後の晩期合併症フォローアップも行っています。小児科年齢を超えた経験者の相談は、AYAサバイバーシップセンターのがん相談員が対応いたします。

小児がんや血液疾患と診断され当院で診療を希望される方は、診断を受けた医療機関を通じてご連絡ください。

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