聖路加国際病院

St Luke's International Hospital

放射線腫瘍科

放射線腫瘍科のお知らせ

  • 読み込み中

乳がん

治療の目的

乳がん術後放射線治療では、手術後に細胞レベルで病変が残存している可能性がある部位に対して放射線を照射します。これにより再発のリスクが低減することが期待されます。

治療方法

接線照射と呼ばれる方法を使用して、乳房または胸壁に対して斜め方向から放射線を照射します。
治療線量と分割回数としては、1回2Gy(グレイ)を25日間行い、合計で50Gy照射します。当院では場合に応じて短期照射(1回2.66Gyを16日間、合計42.56Gy)を勧めることがあります。この方法は通常回数の場合と比較して治療効果に差がないことが示されており、治療日数が短くできます。ただし、すべての患者さんに適応できるわけではありませんのでご相談ください。

毎回の照射時には少なくとも1名の女性スタッフが立ち会いまたは治療を実施し、安心して治療を受けて頂ける体制を整えております。

スケジュール(治療開始までの流れ)

放射線腫瘍科での診察
  • 医師による診察を行います。治療の内容(目的、治療方法、副作用等)について説明します。
治療計画用CT
  • 治療のための照射方向や範囲を決めるCTを撮影します。毎回同じ姿勢を保つことができるよう患者さん専用の固定具を作成したり、補助具を選択したりします。また、位置決めのために体に専用マジックで印を書きます。この印は、非常に重要なので治療終了まで消えないようにします。
治療開始
  • 原則として治療計画用CTから2日後(休日は除く)から治療開始となります。治療は平日の週5日同じ時間に行います。原則として休日・祝日はお休みになります。(※祝日が月曜日にあたる場合、年末年始、ゴールデンウィーク、シルバーウィークは治療日になることがあります。)
  • 治療の初日は15時ごろから行います。その後の治療は、基本的に同じ時間に行います(ご希望に添えない場合もございます、予めご了承ください)。また予定等でやむを得ずご都合がつかない場合や時間をずらしたい場合はご相談ください。
  • 治療にかかる時間は20分から30分程度になります。
治療中・後の診察
  • 治療中は週1回の放射線腫瘍医による診察と、看護師・放射線技師による患者さんの体調の確認や問診を行います。
  • 治療終了後も経過観察を行うため定期的な診察を行います。

治療開始までの大まかな流れとスケジュール例

副作用

基本的に放射線による影響は照射を行った部位にのみ生じ、全身に出ることはありません。また、重篤な副作用はまれです。主な副作用には以下のものがあります。

①放射線皮膚炎

照射を開始して2週間ぐらいすると徐々に放射線があたっている場所(照射範囲)が赤くなり、ひりひりしたり、かゆみが出たり、乳房全体が張ったりすることがあります。また汗腺・皮脂腺の働きが低下します。
皮膚炎の症状に合わせて医師から塗り薬を処方します。かゆみやヒリヒリがつらい時は我慢せずに相談してください。
また皮膚に軟膏やクリーム等が残った状態で照射をすると、皮膚炎が強く出ることがあります。照射前の2~3時間は皮膚に何も塗らないようにしてください。
照射終了後約2週間で皮膚の症状は落ち着きますが、茶色く色素沈着が残ります。色素沈着の回復には1~2年間かかります。汗腺や皮脂線の回復は数年かかり、完全には回復しないこともあります。

②乳房痛

手術後の乳房痛が照射開始後に痛みの感じ方が変化したり、回数が増したりすることがあります。痛みは一時的で常に痛むことはほとんどありません。照射で増した乳房痛は照射が終了すると徐々に落ち着きます。
乳房痛の頻度が多くつらいときは鎮痛剤を処方しますので、相談してください。

③倦怠感

照射開始後、眠気やだるさ、疲労感がでてくることがあります。人によって症状は様々ですが、照射期間中は無理をせず、可能であれば日中に昼寝などで休息をとり、夜も充分な睡眠をとるようにしてください。
倦怠感は照射が終了すると徐々に取れてきます。

深吸気息止め照射(DIBH)

左乳房への放射線治療を行う際に、照射範囲内に心臓が含まれてしまう場合があります。心臓への照射線量が多くなると心疾患発症のリスクが上がることが知られています。
当科では深吸気息止め照射(Deep Inspiration Breath Hold; DIBH)という方法を用いて心臓への線量を低減する取り組みを行っており、国内でも有数の照射実績があります。
この方法は深く息を吸った状態で息止めをすることで、心臓を乳房から遠ざけることが可能になります。一般的にこの方法を用いると、乳房へ適切な線量を投与しつつ、心臓の線量を下げることができます。

事前にDIBHに関するパンフレットや動画を見ていただき、安心して治療できるよう、不安を少しでも軽くなるような取り組みをしております。また、医師・看護師・放射線技師から治療法等に関する説明を丁寧にするよう心がけております。

自然な呼吸状態でのCT(オレンジ)と深吸気息止め状態でのCT(青)の比較
肺が広がり、横隔膜が下がることによって心臓がひだりの乳房から遠ざかっているのがわかります。

自然な呼吸状態でのCT(左)と深吸気息止め状態でのCT(右)の放射線のあたる範囲(黄色の領域)
自然な呼吸状態では放射線の範囲内に心臓が含まれるのに対して、
吸気状態では十分に離れていることがわかります。

加速部分乳房照射(APBI)

約1か月にわたる治療期間は、患者さんにとって通院の負担が大きいと考えられます。そこで、治療効果を落とさずに照射期間を短縮する方法として、加速部分乳房照射(Accelerated Partial Breast Irradiation; APBI)という治療法を臨床研究のもと治療を行っております。この方法は治療期間を短縮し、さらに照射範囲を狭めた治療で、いくつかの臨床研究で有用性が示唆されています。

※すべての方がこの治療法を選択できるわけではございませんので、予めご了承ください。詳しくは医師の診察の際にご相談ください。

トップへ