1)Kirkland KB, Briggs JP, Trivette SL, Wilkinson WE, Sexton DJ. The impact of surgical-site infections in the 1990s: attributable mortality, excess length of hospitalization, and extra costs. Infect Control Hosp Epidemiol. 1999;20:725-730.
2)CDC: Guideline for the Prevention of Surgical Site Infection, 1999. Infect Cont Hosp Epidemiol 1999;20:247-278.
手術後に、手術部位感染(Surgical Site Infection : SSI)が発生すると、入院期間が延長し、入院医療費が有意に増大します1)。SSIを予防する対策の一つとして、手術前後の抗菌薬投与があり2)、手術開始から終了後2~3時間まで、血中および組織中の抗菌薬濃度を適切に保つことで、SSIを有意に予防できると考えられています。このため、手術執刀開始の1時間以内に適切に予防的抗菌薬を投与することが勧められます。
抗菌薬予防投与は感染がない手術に用いられるものであり、すでに感染している患者さんの手術や、切開した皮膚を閉じない予定手術は、予防的抗菌薬投与の対象外となります。
当院では、皮膚切開時に最高血中濃度が保たれるタイミングで術前の予防的抗菌薬の投与をしており、外科・麻酔科・手術看護スタッフ間で共有されていたため、十分高い数値となっています。また、手術室への入室から麻酔の導入、手術開始までの手順にばらつきが少ないため、執刀開始時間を予測しやすいことも理由に考えられます。
手術開始1時間以内に抗菌薬が投与されなかった患者さんの調査を行い、手術開始1時間前に行われる行為の調査および手順の見直しを行うことで、さらなる数値の改善が期待されます。