聖路加国際病院

St Luke's International Hospital

情報システム部

情報システム部は、学校法人聖路加国際大学および聖路加国際病院をはじめとする各事業体におけるすべての情報システムを一元的に運用管理し、安全で質の高い医療サービスの提供、職員の業務の効率化、病院経営の改善、教育研究活動を支援しています。また、これらの基盤となる情報システムインフラの整備や、情報セキュリティ対策の強化にも取り組んでいます。専任の事務職員のみならず、医師、看護師、臨床放射線技師、臨床検査技師等が兼務として在籍し、多職種が協力して業務を推進しています。

  

医療情報システムの運用管理

聖路加国際病院における診療録および医用画像はほぼ100%電子化されており、当院を受診する患者さんのすべてのデータは、電子カルテシステムをはじめとする「医療情報システム」において統合管理されています。これにより、院内のさまざまな場所に配置された数千台のデバイスから「いつでも」「どこでも」「リアルタイムに」患者さんの情報を読み書きすることができる仕組みが確立されています。

当院の医療情報システムは、電子カルテシステムを中心に多数の部門システムが相互連携することによって形成されており、現在は2020年に本稼働した第5世代システムを運用しています。電子カルテとのデータ送受信を行っている部門システムは年々増加し、現在ではおよそ30のシステムがリアルタイムのデータ連携を行っています。各部門で発生した検査結果等はすべて電子カルテに集約保存される仕組みとすることで、院内部門間のスムーズな連携に寄与しています。

情報システム部では、医療情報システムの企画・導入、ベンダマネジメント(システム構築や保守を担当する契約先業者との折衝)、多職種との運用検討、マスタメンテナンス、ヘルプデスク(職員からの日常的な問い合わせ窓口)開設等を通じて、日々の医療情報システムの利用をサポートしています。

蓄積されたデータの積極的な利活用

当院では、2003年に電子カルテシステムを導入して以来、デジタルデータの特性を活かし、データの二次的な利用を積極的に行い、医療の質の向上や経営改善に努めてきました。情報システム部では、利用者のニーズに応じたデータ抽出が簡易に行える仕組みの構築や、抽出業務の技術的支援を行い、日々の臨床業務の改善、病院の経営改善、教育研究活動におけるデータ提供等に寄与しています。なお、これらのデータの一部は、「Quality Indicator」として当院WEBサイト上で公開されています。

Quality Indicator 2023

また、富士通株式会社(現:富士通Japan株式会社)と共同開発した「医療業務意思決定支援システム」(製品名:HOPE LifeMark-HX NaviChart / HOPE EGMAIN-GX NaviChart)は、電子カルテに保存されたデータをルールに基づいて解析し、必要と思われるアクションを適切なタイミングで電子カルテの利用者に促すことができるツールであり、当院でも運用中です。患者さんの状況に応じた検査や診療行為の提案や、業務のリマインドといった機能を、各病院が独自のルールで実装することができる汎用性を重視して開発されており、現在全国の病院向けに販売されています。

*実際のデータ抽出業務や、医療業務意思決定支援システムの運用管理は、病院事務部医療情報課が担当しています。

Microsoft 365の利活用

2020年、COVID-19の世界的な蔓延により、当院でも集合形式での会議やカンファレンスの開催が制限されるようになり、オンライン会議ツールの整備が急務となりました。情報システム部では、中期的に導入が検討されていたMicrosoft 365(Microsoft社が提供する、複数のビジネスツールが利用可能なクラウドスイート製品)を一部前倒しで導入し、全職員がMicrosoft Teamsによってオンライン会議やチャットを利用できる環境を整備しました。

その後、2021年にMicrosoft 365を正式に導入し、Microsoft Teamsに加え、これまで院内のみで利用可能だった電子メール(Exchange Online)や、ポータルサイト(SharePoint Online)等を院外からも安全に利用できるよう整備を行い、業務改善や職員の働き方の改善に寄与しました。

病院全体でのビッグプロジェクトへの参画

病院において新しい取り組みを開始する際、情報システムとの関わりについて着目しておく必要があります。病院全体でのビッグプロジェクトが動き出すときには、情報システム部がプロジェクトに参画し、情報システムをどのように活用すればよりよい運用ができるか、逆に既存の情報システムが足かせとなって想定していた運用ができないといった事情がないか、新たに考慮しなければならない点がないか、念入りに確認します。

【近年のビッグプロジェクトへの参画】

  • 臨床学術センター新築移転(2016年)
  • 3階手術室増設及び無痛分娩開始(2017年)
  • 聖路加助産院開設(2017年)
  • 聖カタリナ病院(連携医療機関)開設(2018年)
  • 院内スマートフォン導入(2021年~)
  • ナースコール設備更新(2021年)
  • 病院本館受変電設備更新(2022年)
  • スマートフォンによる妊婦への情報提供サービス導入(2022年)
  • オンライン資格確認サービス対応(2022年)
  • 医師の働き方改革対応(2023年)
  • 監視カメラ更新(2023年)
  • 検体検査室・細菌検査室機器更新(2024年~)
  • 2階手術室増設工事(2024年~)

情報システムインフラの整備、情報セキュリティ対策の強化

優れたソフトウェアを開発しても、それを支える情報システムインフラが整備されていなければ、安定した運用は望めません。当院では委託ベンダと連携しながら、情報システムを支えるネットワーク機器、サーバ機器を24時間/365日体制で監視し、障害発生の未然抑止や、障害発生時のダウンタイムの最小化に取り組んでいます。また、プライベートクラウドとして病院統合仮想化基盤を構築し、院内共通データベースや医療情報システムにおける部門システム等が当基盤上で稼働しています。

また、近年被害が増加している情報セキュリティ侵害への対策強化も重要な業務です。当院では、厚生労働省から公表されているガイドラインをもとに、ファイアウォールの厳格な運用等による境界型セキュリティの強化に加え、各システムにおける個人認証の徹底やエンドポイントでの対策の強化等、ゼロトラストセキュリティの実現に向けた取り組みを進めています。

教育体制

情報システム部では、情報工学系の専門学校を卒業したスタッフ、4年制大学の文系学部を卒業したスタッフ、他部署からの異動によって配属されたスタッフなど、様々なバックグランドを持つスタッフが活躍しています。入職時に医療や情報システムに関する深い知識がなくても、配属後の課内外での研修やOJTを通じて技術を習得することができます。

【主な教育研修活動】

  • 内定者研修(事務共通)
  • 新入職員研修(事務共通)
  • 事務部署ローテーション研修(事務共通)
  • 1年目フォローアップ研修(事務共通)
  • メンタリング制度(1~2年目、事務共通)
  • 各種e-learning(全職員共通)
  • 課内講義、OJT
  • 課外研修