聖路加国際病院

St Luke's International Hospital

Quality Indicator(医療の質)

Quality Indicator 2015 医療の質を測り改善する

Quality Indicator 2015 医療の質を測り改善する

福井 次矢 監修 聖路加国際病院QI委員会

インターメディカ 2015年11月

聖路加国際病院の10年間以上にわたる改善活動を収載。
QIの測定・公表が急速に普及し、
わが国における医療の質改善への取り組みは新たな実践の段階へ。

我が国の医療の質の更なる向上を目指して

「OECD医療の質レビュー日本:2015」の中で、「日本の病院は、治療の成果に関するデータを統計的に収集しておらず、病院の医療の質を監視及び評価するシステムが欠落している」と述べられる中、「聖路加国際病院で実施している質指標プロジェクトは特に印象的であり、国全体で展開するロールモデルとなりうる」との評価を受けました。

ESQR(欧州質研究学会)よりベストプラクティス賞を受賞

当院が取り組んでまいりました「医療の質を表す指標の測定・公開と改善活動」が高く評価され、この度、2016年欧州ベストプラクティス賞を受賞しました。同賞は、Quality CultureならびにQuality Improvementを促進することを目的とした、スイスのローザンヌ地方を拠点とする欧州質研究学会(ESQR…European Society for Quality Research)が主催し、世界中の企業、組織の中で様々な分野における顕著な質改善運動の功績が認められた団体を表彰するものです。授賞式は、6月4日(土)にベルギーの首都ブリュッセルにて開催され、75の企業、組織とともに当院が表彰されました。

プレスリリース

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国際病院連盟より国際病院連盟賞最高位賞を受賞

当院が取り組んでまいりました「医療の質を表す指標の測定・公開と改善活動」が高く評価され、この度、国際病院連盟賞最高位賞を受賞しました。同賞は、国際病院連盟が主催し、世界中の病院の活動、取り組みで、顕著な功績が認められた病院を表彰するもので、今年が第1回目となります。授賞式は、2015年10月6日に米国シカゴで開催されました国際病院連盟主催の世界病院会議において執り行われました。

プレスリリース

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聖路加国際病院がQIにこだわる理由

聖路加国際病院では2007年より他施設に先駆け、Quality Indicator(以下QI)の公表を行ってまいりました。QIとは、医療の質を評価する目安となる指標です。自分たちの提供している医療が本当に質の高いものであるかどうか、課題があればそれが改善されているかどうかなどを数値として示すことで、より質の高い(エビデンスに則した)医療の提供ができると考えています。

QIの測定・公開は医療者のパフォーマンス改善を目的に

わが国でも、多くの病院がQIを測定し、公開するようになってきました。聖路加国際病院のスタッフが関わっている日本病院会のQIプロジェクトもその一例です。このプロジェクトへの参加病院数は、初年度(2010年度)の30、2011年度の85、2012年度の145、2013年度の226、2014年度の295、そして2015年度は326病院まで増えました。

2015年は73のQIを測定、公開しました

2015年は以下の73指標の測定を行いました。聖路加国際病院は、この指標に基づき、業務改善、提供する医療の質の向上に努めております。

Quality Indicator 2015 [医療の質]を測り改善する-目次-

第1章 医療の質とEBM、Quality Indicator

第2章 聖路加国際病院におけるQI測定・公表の経緯・手順と「改善」

第3章 基準指標と統合指標

第4章 病院全体

  • 1.死亡退院患者率
  • 2.退院後6週間以内の予定外再入院率
  • 3.病床利用率、平均在院日数
  • 4.職員の非喫煙率
  • 5.医業利益率

第5章 報告・記録

  • 6.2週間以内の退院サマリー完成率、48時間以内の手術記録完成率
  • 7.放射線科医による読影レポート作成に24時間以上かかった件数の割合
  • 8.ICUでの1患者1入院日あたりの平均ポータブルX線検査数
  • 9.消化管生検検査の報告書が48時間以内に作成された割合
  • 10.24時間以内にアセスメントされている割合
  • 11.検体検査の報告に要した平均時間

第6章 教育

  • 12.剖検率
  • 13.研修医1人あたりの指導医数、研修医1人あたりの専門研修医数
  • 14.卒後臨床研修マッチング1位希望者の募集人数に対する割合
  • 15.看護師の教育歴
  • 16.看護師100人あたりの専門看護師数、看護師100人あたりの認定看護師数

第7章 患者満足

  • 17.意見箱投書中に占める感謝と苦情の割合
  • 18.患者満足度

第8章 看護

  • 19.転倒・転落リスクアセスメント実施率、転倒・転落予防対策立案率、転倒・転落予防対策説明書発行率、転倒・転落リスク再アセスメント実施率
  • 20.転倒・転落発生率、転倒・転落による損傷発生率
  • 21.褥瘡発生率
  • 22.褥瘡発生リスクの高い人に対する体圧分散寝具の使用率(処置実施率)
  • 23.口腔ケア実施率

第9章 薬剤

  • 24.ステロイド服薬患者の骨粗鬆症予防率
  • 25.ワルファリン服用患者における出血傾向のモニタリング
  • 26.入院患者のうち薬剤管理指導を受けた者の割合、薬剤管理指導を受けた者のうち回避された障害レベルが3以上の割合

第10章 手術・処置

  • 27.中心静脈カテーテル挿入術の重篤合併症発生率
  • 28.回復室長期滞在率
  • 29.執刀開始1時間以内に予防的抗菌薬投与を開始した割合
  • 30.手術患者における静脈血栓塞栓症の予防行為実施率
  • 31.予防行為が行われなかった入院患者の静脈血栓塞栓症の発生率、予防可能であった可能性のある静脈血栓塞栓症の割合
  • 32.術中体温管理がされている手術患者の割合
  • 33.非心臓手術における術後24時間以内・心臓手術における術後48時間以内に予防的抗菌薬投与が停止された割合
  • 34.ガイドラインに準拠して予防的抗菌薬が投与されている患者の割合
  • 35.心臓手術患者における術後血糖値のコントロール

第11章 生活習慣

  • 36.糖尿病患者の血糖コントロール(HbA1c)
  • 37.高血圧患者の血圧測定率
  • 38.降圧薬服用患者の血圧コントロール
  • 39.LDLコレステロールのコントロール

第12章 呼吸器

  • 40.肺炎患者におけるERでの抗菌薬投与前の血液培養実施率

第13章 脳・神経

  • 41.入院となった脳血管障害患者における頭部CT検査施行までに要した時間
  • 42.虚血性脳卒中における抗血栓薬退院時処方率
  • 43.心房細動・心房粗動を伴う虚血性脳卒中患者における抗凝固薬退院時処方率
  • 44.脳卒中患者におけるリハビリテーション実施率

第14章 心血管

  • 45.PCI後24時間以内の院内死亡率
  • 46.急性心筋梗塞の患者で病院到着からPCIまでの所要時間が90分以内の患者の割合
  • 47.急性心筋梗塞患者における退院時処方率
  • 48.急性心筋梗塞患者における病院到着前後24時間以内のアスピリン処方率、急性心筋梗塞患者における病院到着後24時間以内のβ-遮断薬処方率
  • 49.左室機能が悪い急性心筋梗塞患者へのACEI/ARB退院時処方率
  • 50.PCI後24時間以内のCABG実施率
  • 51.左室機能が悪い心不全入院患者へのβ-遮断薬処方率、左室機能が悪い心不全入院患者へのACEI/ARB処方率
  • 52.心不全入院患者における左室機能評価
  • 53.心不全入院患者における退院後予約割合
  • 54.心不全患者における退院後の治療計画記載率
  • 55.開心術を受けた患者の平均術後在院日数、人工心肺手術を受けた患者の平均術後在院日数
  • 56.心大血管リハビリテーション外来継続率

第15章 慢性腎臓病

  • 57.慢性腎臓病患者でのRAS阻害薬処方率
  • 58.維持透析患者の貧血コントロール
  • 59.維持血液透析の透析効率、維持腹膜透析の透析効率

第16章 眼・耳鼻咽喉

  • 60.網膜剥離術後28日以内の予定外再入院率
  • 61.急性外耳炎患者における全身抗菌薬療法を施行しなかった割合

第17章 救急

  • 62.小児頭部外傷患者の「頭部外傷テンプレート」記入率、小児頭部外傷患者のCT検査実施率
  • 63.救急車受入台数、救急車・ホットラインの応需率

第18章 腫瘍

  • 64.乳癌手術後にアロマターゼ阻害剤を服用している患者の骨密度チェック率
  • 65.初診から放射線治療開始までの所要日数が基準日を超えた患者の割合
  • 66.Stage IIIの大腸癌患者における補助化学療法実施率
  • 67.Stage II, IIIの胃癌患者における術後S-1療法実施率

第19章 地域連携

  • 68.紹介率・逆紹介率

第20章 感染管理

  • 69.人工呼吸関連肺炎(VAP)発生率
  • 70.中心ライン関連血流感染発生率
  • 71.手術部位感染発生率
  • 72.尿道留置カテーテル関連尿路感染発生率
  • 73.手指衛生実施率

聖路加国際病院で行われた、QI指標を用いた医療の質改善事例

時系列でQIを測定しながら、医療の質を改善するために、診療内容や看護業務の見直しに取り組んでいます。2015年の事例を抜粋してご紹介いたします。

【Process】救急車受入台数 Number of Ambulance

執筆者:大谷 典生(救急部医長)

定義

救命救急センターで受け入れた患者のうち、救急車で来院した患者数
包含:ホットライン件数

2004年度 5,397台
2005年度 5,502台
2006年度 6,679台
2007年度 7,663台
2008年度 9,726台
2009年度 9,504台
2010年度 7,641台
2011年度 8,852台
2012年度 9,041台
2013年度 10,742台
2014年度 10,148台
参考値

【Process】救急車・ホットラインの応需率 Acceptance Rate of Ambulance Call

執筆者:大谷 典生(救急部医長)

定義

分子:救命救急センターで受け入れた患者のうち、救急車で来院した患者数
分母:救急車要請件数
分子包含:ホットライン件数

分母 分子
2004年度 64.9% 8,317件 5,397件
2005年度 65.8% 8,359件 5,502件
2006年度 68.6% 9,737件 6,679件
2007年度 67.0% 11,441件 7,663件
2008年度 75.7% 12,849件 9,726件
2009年度 78.4% 12,124件 9,504件
2010年度 81.4% 9,384件 7,641件
2011年度 82.5% 10,732件 8,852件
2012年度 86.6% 10,441件 9,041件
2013年度 86.6% 12,398件 10,742件
2014年度 86.9% 11,683件 10,148件
比較値

臨床的意義: なぜこの指標が医療の質を示しているのか

当院では、救急医療の機能を測る指標として「救急車・ホットラインの応需率」を採用しています。この「救急車・ホットラインの応需率」は、「救命救急センターで受け入れた救急車来院患者数」÷「当院への救急車受入要請件数」で算出しています。
当院救急部としては、救急車の受け入れ要請に対しては、可能な限り応需すべく取り組んでおります。しかし、残念ながら、要請された救急車をすべて受入れられるわけではありません。当院が周辺地域に対して果たすべき役割を考えると、応需率を上げる努力を続けていく必要があります。

「救急車・ホットラインの応需率」の向上は、救急部だけの努力で改善できる指標ではありません。救急診療を担当する医療者の人数、診療の効率化、入院を受け入れる病棟看護師や各診療科の協力など、さまざまな要素がかかわります。

Plan(計画)

病院の基本方針「高度急性期医療提供体制を確保する。」の一つとして、応需率を掲げる。

Do(実行)

断る結果となった患者について、毎日病床会議にて報告

Check(評価)

断らざるを得なかった理由を常にモニター・分析し、病院のシステムとして介入する必要のあるポイントを抽出

Act(改善)

モニタリング継続

考察

2014年は受け入れ患者数10148件、応需率86.9%と昨年までの水準を維持することができました。

過去の救急車の受け入れができなかった理由を分析すると、主な理由の一つに「入院病床がない」が挙げられていました。
数年前から病院をあげて病床有効活用のための病床管理体制をとるようになっています。このシステムが軌道にのり、救急受け入れのための空床の調整や、情報の共有がうまく機能した結果、現在の値が得られていると考えます。また、救急外来での経過観察ベッドの増床に伴い、受け入れのキャパシティーが増えたことも、数値改善の一因であったと考えています。

今後も、救急車受け入れ要請を断らざるを得なかった理由を常にモニター・分析し、病院のシステムとして介入する必要のあるポイントを抽出し、受入数・応需率の向上(当面は応需率90%)を目指したいと考えています。

指標改善パターン

フィードバック、コミュニケーションの改善

<参考文献>

【Process】手指衛生実施率 Hand hygiene compliance rates

執筆者:坂本 史衣 (QIセンター 感染管理室マネジャー)
浅野 恵子(QIセンター 感染管理室)

定義

分子:病棟において手衛生を実施した機会数※
分母: 病棟において手指衛生を実施する必要があった機会数※

※各病棟を四半期に2回、1回につき平均60分間モニタリングした際の機会数の合計

参考値の定義1)

分子:手指衛生を実施した機会数
分母:手指衛生を実施する必要がある機会数

分母 分子 方法
2011年 53% 292 156 担当者による直接観察法
2012年 45% 3,676 1,670 ホームビデオカメラによる直接観察法
2013年 60% 4,768 2,868 常設ネットワークカメラによる直接観察法
2014年 70% 5,894 4,107 同上
参考値1) 40%

臨床的意義: なぜこの指標が医療の質を示しているのか

世界保健機構(WHO)や米国疾病対策センター(CDC)は、それぞれの医療関連感染(以下、HAI)予防ガイドラインにおいて、手指衛生の実施を強く推奨しています。その根拠となっているのは、システマティックレビューなどのエビデンスレベルが高い研究結果ではなく、多面的介入により手指衛生実施率が上昇した後、感染や保菌の発生率の減少を認めた観察研究です。観察研究とはいえ、同様の現象が国内外の多数の病院から報告されていることや、手指衛生により手指の細菌数が減少するとHAIは減少するという理論が科学的常識と矛盾しないことから、手指衛生は最も基本的かつ重要なHAI予防策であるとの考え方が国際的に定着しています。

Plan(計画)

手指衛生実施率の定期的な測定とフィードバック
実施率の低い職員の特定とQIセンター感染管理室スタッフまたは各部門担当者または病院長による個別指導
各部門のQuality Improvement Boardへの手指衛生実施率の掲示

Do(実行)

2011年度 QIセンター感染管理室スタッフによる直接観察法によるモニタリング
2012年度 家庭用ビデオカメラを用いたモニタリング
2013年度 常設ネットワークカメラを用いたモニタリング
2014年度 外来、検査部門および、本院以外の事業体における直接観察法によるモニタリング

Check(評価)

前年度より実施率が上昇していることを確認

Act(改善)

引き続き手指衛生実施率のモニタリングとフィードバックを継続
実施率の低い職員の特定とQIセンター感染管理室スタッフまたは各部門担当者または病院長による個別指導
各部門のQuality Improvement Boardへの手指衛生実施率の掲示

考察

世界各国の病院から報告される医療従事者の手指衛生実施率は決して高くはなく、平均約40%です1)。実施率を評価するために、WHOは訓練を受けた者が医療従事者の行動を直接観察する手法を推奨しています。この評価法の長所は、適切なタイミングに、適切な方法で手指衛生が行われているかを、実際に目で見て確認できる点です。主な短所は、手指衛生を要するすべての機会のうち数%しか観察できないため施設の全体像が把握しづらいこと、そしてホーソン効果(他人から監視されていると思うことが望ましい行動をとることにつながる)による過剰評価が挙げられます。

当院では、2011年まで感染管理担当者が直接観察を実施していましたが、ホーソン効果を避けるために、2012年からは病棟の通路などに一定時間、三脚で家庭用ビデオカメラを設置して実施率を確認しました。これに伴い、実施率は8ポイント減少しましたが、この値は現状をより正確に反映していると考えられました。

2013年からは病棟の天井に複数の小型のネットワークカメラを常設し、1日24時間にわたる全病棟の手指衛生実施状況が1台のコンピュータで確認できるようになりました。動画は1週間分保存されるため、さまざまな時間帯における実施率を観察することができます。

2014年度からは、外来、検査部門や本院以外の事業体において任命された担当者が、直接観察法によるモニタリングを実施しています。これらの取り組みの結果、手指衛生実施率は70%にまで上昇してきました。各部署の手指衛生実施率は、患者エリアに設置されたQuality Improvement Board(質改善掲示板)と呼ばれる掲示板にその他のQI指標と共に貼り出され、その部署を訪れる誰もが最新の実施率を確認できるようになっています。

指標改善パターン

フィードバック、施設・設備・機器

<参考文献>
1) Centers for Disease Control and Prevention: Guideline for Hand Hygiene in Health-Care Settings, 2002. MMWR 2002;51:RR-16 (2014年5月15日検索)
2) WHO. WHO Guidelines on Hand Hygiene in Health Care. (2014年5月15日検索)

QI指標の詳細・測定結果は『Quality Indicator 2015 医療の質を測り改善する』として出版しています。

Quality Indicator 2015
医療の質を測り改善する

Quality Indicator2015 医療の質を測り改善する

Quality Indicator 2014
医療の質を測り改善する

Quality Indicator2014 医療の質を測り改善する

Quality Indicator 2013
医療の質を測り改善する

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Quality Indicator 2012
医療の質を測り改善する

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Quality Indicator 2011
医療の質を測り改善する

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Quality Indicator 2010
医療の質を測り改善する

Quality Indicator2010 医療の質を測り改善する

Quality Indicator 2009
医療の質を測り改善する

Quality Indicator 医療の質を測り改善する 2

Quality Indicator
医療の質を測る Vol.1

Quality Indicator 医療の質を測る Vol.1

Quality Indicator
医療の質を測る Vol.2

Quality Indicator 医療の質を測る Vol.2

St.Luke's Quality and Healthcare Report 2006

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