化学療法
化学療法は抗がん剤を投与して、がん細胞を攻撃して死滅させる治療法です。手術や放射線治療が体の一部だけにはたらきかける『局所治療』であるのに対して、抗がん剤は『全身にはたらく治療』といえます。化学療法では、検査では発見できないほどの小さな転移の芽(微小転移巣)に対する治療効果を期待できます。
一方、正常な細胞にも一時的に影響を与えるためにそれが副作用となって現れます。近年は副作用対策も向上していますので、できる限り副作用を軽減して、治療に臨めるように配慮しています。抗がん剤の利益(ベネフィット)と副作用・危険性(リスク)をよく考えて、治療を行うことが大切です。
1.術前化学療法
手術前に行う化学療法のことです。この治療法のメリットとしては以下のようなものがあります。
- 腫瘍を縮小させることによって乳房温存療法の適応が拡大し、温存率が向上する、あるいは切除不可能な大きさのがんを切除可能な大きさにすることができる。(効果があっても必ず温存療法が可能となるわけではありません)
- 化学療法の効果を直接確認することができる。
- 効果のある薬剤の目安がつけられる。
化学療法の効果がない場合や逆に腫瘍が増大する場合は、早めに薬剤を変更するか、治療を中止して手術をくり上げることで対応します。
2.術後化学療法
手術後に行う化学療法のことです。全身治療の指標を参考にしたり、本人の希望を勘案して化学療法の適応を決めます。
スケジュール
通常3週間毎に通院してもらい、約2時間の点滴を4〜8回(3〜6ヶ月)行います。抗がん剤の種類により1週間毎に通院して行うこともあります。 使用する薬剤やスケジュールについては治療開始前のオリエンテーションで詳しくご説明します。
化学療法の副作用
代表的なものは骨髄抑制(主に白血球減少)、脱毛、吐き気、胃腸などの消化器粘膜への影響(口内炎や下痢)、などがあります。これらの副作用の程度には個人差があります。
代表的な副作用
脱毛
抗がん剤の治療を開始して2週間目頃に髪の毛が一気に抜けます。これは髪の毛をつくる細胞(毛母細胞)が細胞分裂の活発なところであるために、抗がん剤の作用を受けやすく、結果として髪の毛が抜けてしまいます。脱毛は抗がん剤の治療による一時的な副作用で、治療が終了すると徐々に生え始めてきます。治療後に髪質が変化したり、生え揃わない部分が残ることがあります。
骨髄抑制
血液の中には白血球・赤血球・血小板の3つの成分があります。これらの成分はすべて骨髄で作られます。抗がん剤の影響で骨髄機能が低下することを、骨髄抑制と言います。白血球の数が少なくなると感染しやすくなったり、感染が重症化したりします。手洗いやうがい、マスク着用などの感染予防で対応していただきます。感染症状(発熱など)に対しては抗生剤投与などを行います。
吐き気
抗がん剤によっては吐き気が出現することがあります。抗がん剤投与前に吐き気を強力に抑える予防薬を使います。予防薬により、吐き気をまったく感じない人もいます。さらに帰宅後に服用できるよう内服の予防薬も処方します。詳細はパンフレットを御覧ください。
化学療法は通常外来通院で行います。化学療法を行っていく上でできる限り副作用を軽減させて日常生活を平常に近い状態に保つことは極めて重要です。バランスの良い食事や適度な運動、趣味の活動などでストレスが少ない状態で過ごせるよう心がけましょう。
化学療法を安全に受けるために患者さん自身にも協力して頂きたいこと
- こまめに手洗い、うがいをする
- お風呂やシャワーで身体を清潔に保つ
- 虫歯、巻き爪、吹き出物の化膿などは感染の原因になりやすいので、化学療法を開始する前に早急に治療をしておく
化学療法を開始するときには薬剤師、看護師により改めてオリエンテーションを行います。