全身治療の指標
生検や手術で摘出した組織は顕微鏡で、がん組織があるか、またそのがん組織にはどのような性質があるかを調べます(病理検査)。全身治療は、年齢や閉経の状況、健康状態などに加えて、この病理検査の結果を重要な指標として適応を判断します。
組織型(非浸潤性乳管がん、通常型浸潤性乳管がん、特殊型(粘液がん、小葉がんなど))
通常型浸潤がんは乳頭腺管がん、充実腺管がん、硬がんに分類されますが、治療方針を決める上ではそれほど重要ではありません。
腫瘍の大きさ
がんが浸潤している部位の大きさを測定します。非浸潤がん部分は評価に含みません。
核グレード
がん細胞の核の形態と核分裂の程度を評価して3段階に分類します。
腋窩リンパ節の転移状況
エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PgR)の有無
乳がん細胞にエストロゲンやプロゲステロンに反応する受容体があるかどうかを調べます。ER/PgRがある場合は、女性ホルモンの影響を大きく受けて成長するタイプの乳がんであることを意味します。受容体陽性の場合は内分泌療法の効果が期待できます。
HER2(ハーツー)タンパクの発現
HER2タンパクは乳がん細胞の表面に発現し、がん細胞の増殖を促す作用を示すと言われています。近年、このHER2タンパクの作用を抑制するハーセプチンという薬が開発され、広く使われるようになりました。ハーセプチンはHER2タンパクを多く発散しているがん細胞のみを標的に効果を示すため、一般の抗がん剤に比べて副作用が軽度です。免疫染色検査で強陽性(3+)の場合、ハーセプチンの適応となります。2+の場合はDNA検査(FISH法)を追加して判定することがあります。
Ki-67
Ki-67は細胞の増殖能を示しています。ホルモン陽性乳がんの参考に用います。
多重遺伝子診断法(オンコタイプDXなど)
乳がんの再発リスクを調べる検査法です。手術で採取した乳がん組織を使って、がん細胞に含まれる遺伝子を調べます。再発リスクだけでなく、化学療法の適応となるかの判断に迷う場合に用いることがあります。日本で保険適応外のため、自費診療となります。