聖路加国際病院

St Luke's International Hospital

乳腺外科

腋窩郭清をされた方へ

わきの下のリンパ節は、腕や乳房から心臓へと流れていくリンパ液の通り道であり、流れてきたリンパ液に含まれる老廃物を除去する働きをしています。それを切除したことにより、腕や乳房から心臓へと流れていくリンパ液の流れが悪くなることがあります。腕にリンパ液がたまってくると、腕の浮腫が生じてきます。これをリンパ浮腫といいます。
手術で腋窩郭清をされた方は、術後数ヶ月〜2年くらいたって起こる場合があります。なかには10年以上たっておこる場合もあります。リンパ浮腫を予防・改善するために日常生活の注意点があります。

(センチネルリンパ節生検だけしか行っていない方でも、軽度のリンパ浮腫をおこすことがわずかながらあります。それほど神経質になる必要はありませんが、生活上の注意は同様に知っておいた方がよいでしょう)

日常生活上の留意点

リンパ浮腫の症状について正しく理解し、日常的なセルフケアを基盤として無理せずに、できることから取り入れることが望ましいです。とくに皮膚を傷つけないようにすることが必要です。

スキンケア

  • 手術した側の上肢を清潔に保つ。とくに、乾燥には気をつけ、必要時は保湿クリームなどで保湿をする。
    汗をかいた後は、しっかり拭き取る。
  • つめのお手入れをする。甘皮は無理にはがさないようにする。
    深爪をしない。
  • きつすぎる指輪や腕時計などで患肢を圧迫しないようにする。
  • 使用する洗剤や化粧品は刺激の弱いものを選ぶ。

衣類

  • 身体を締めすぎないゆったりめのやわらかい下着を選ぶ(胸部や腋窩を締めつけないアンダーや肩ひものブラジャー、レース幅の広い下着が望ましい)。
  • 袖ぐりのゆったりしたものを選ぶ。
  • 強い日差しや外的刺激から患肢を保護する(長袖の衣類、スリーブなど)。

旅行・移動の際

  • 長時間重い荷物をもつことを避ける。手荷物は、コンパクトにする。リュックサックのような肩を締めつけるものは長時間使用しないようにする。
  • 長時間の運転は避け、こまめに休憩する。
  • サウナや長時間の入浴は避ける。

炎症を起こさないようにする

リンパ節郭清をした側の腕は炎症を起こしやすくなっています。

リンパ節郭清をした側の腕については以下のような点を注意してください。

  • 血圧測定・採血・注射は極力行わない。
  • 鍼治療や強いマッサージを避ける。
  • 怪我をしないよう心掛ける。小さな傷を負ってしまったらすぐ水洗いをし、消毒する。

浮腫の改善を図る

実際に浮腫が起きた場合には、次のようなことを実践すると良いでしょう。

皮膚と手のひらを密着させ、皮膚の上で、手をすべらせる(さする、なでる)のではなく、皮膚全体をずらすようにゆっくりと動かします。
指圧のように1点に力を集中させないように、力を入れすぎないようにします。
  • 就寝時、無理のないように、やわらかいクッションなどで患肢を少し高くあげて寝る。
  • リンパドレナージを行う。
    ドレナージとは排出、排液という意味です。患肢の皮膚を手のひら全体でずらすように動かすことにより、患肢にたまったリンパ液を皮下の毛細リンパ管から移動させて浮腫を改善することです。正しい方法で行えるようにスタッフから指導を受けるとよいでしょう。状況によっては専門の治療施設をご紹介することも可能です。
  • 圧迫療法を行う。十分なリンパドレナージができなくても、適切な圧迫療法を行うことで浮腫の改善が図れます。弾性スリーブなどを利用し皮膚の外部から十分に圧迫してリンパの流れを促します。
  • 圧迫したうえで筋肉運動を行うと、さらに治療効果があがります。ゆっくり筋肉を使うように運動してください。下図のような運動を行うと効果的です。

上肢の運動

手関節の運動 ボールを握りしめる運動 肩の上下運動 胸と手を同時に広げる

以上のことはセラピストの対応が望ましい場合もあります。必要時スタッフにご相談ください。

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