聖路加国際病院

St Luke's International Hospital

乳腺外科

遺伝性乳がん・卵巣がんについて

遺伝性乳がんについて知ることは、適切な予防と治療選択につながります。

以下の条件にあてはまる方は早めに遺伝カウンセリングを受けることをお奨めします。

  • 45才以下で乳がんになった人(家族歴に不明な点が多い場合は50才以下)
  • 60才以下でトリプルネガティブ乳がんになった人

近い血縁内に

  • 乳がんや卵巣がんを発症した人がいる
  • 両方の乳房にがんを発症した人がいる
  • 若い年齢(45才以下)で乳がんを発症した人がいる
  • 乳がん・卵巣がんの両方を発症した人がいる
  • 男性乳がんを発症した人がいる

※近い血縁内とは一般的に父母、兄弟姉妹、子供、祖父母、叔父叔母を指します。

上記の質問に一つでも該当する項目があれば、
あなたが遺伝性乳がん卵巣がんである可能性は
一般よりも高いと考えられます。

米国における、すべての乳がんのうち、家族性乳がんの占める割合
(ASCO Cancer Genetics & Cancer Predisposition Testing 2nd Editionより一部改変)

米国における、すべての乳がんのうち、
家族性乳がんの占める割合

がんの多くは遺伝と関係なく発生しますが、同じ家系の中である種のがんが多発している場合は、同じ種類のがんにかかりやすい性質を受け継いでいること(すなわち遺伝)があります。乳がん、卵巣がんにおいても同様のことがいえます。

遺伝性乳がん・卵巣がんの可能性がある方に対しては、そのリスクに応じた予防や治療方針をとることが大切です。当院では遺伝診療センターで、遺伝性乳がん、卵巣がんについてご相談をお受けしています。

主な相談内容

乳がん・卵巣がんの遺伝について、遺伝の可能性について、乳がん・卵巣がんのリスクについて、遺伝子検査について、など

遺伝子の変異と遺伝子検査について

遺伝性乳がん、卵巣がんとBRCA1およびBRCA2遺伝子

遺伝性乳がん、卵巣がんの研究が進んでいる欧米で、その原因となる遺伝子として、BRCA1とBRCA2という2つの遺伝子が発見されました。遺伝性乳がん、卵巣がんと考えられる方の多くは、BRCA1とBRCA2という2種類の遺伝子のどちらかに病的変異(病気の発症に関係する変化)をもっていることがわかりました。

遺伝子の病的変異が見つかる確率は、本人およびその家族の乳がん、卵巣がんの発症年齢や、発症者数などにより異なり、数%から80%まで幅がありますが、日本人でも欧米と同じような割合で変異が検出されることがわかっています。

欧米での研究から、BCRA遺伝子が陽性の場合の乳がん、卵巣がんの発症リスクは以下のグラフのようになっています。温存手術後の乳房内の再発、および対側乳がんの発症が高いというデータもあります。

BCRA遺伝子が陽性の場合の乳がん、卵巣がんの発症リスク

しかし、この数字が日本人にも、そのままあてはまるか、疑問を持つ研究者もいます。日本人は欧米人に比べてもともと乳がんになりにくいという特徴を持っているので、たとえBRCA1またはBRCA2遺伝子に病的変異があっても乳がんになる確率は欧米の数値より低いかもしれません。

日本における遺伝性乳がん、卵巣がんのBRCA1とBRCA2に関する研究も進みつつあり、欧米の研究成果と類似する成績もありますが、詳細な数値は、今後さらに研究を重ね、正確な統計処理を加えなければならないと考えられています。さらに、BRCA1とBRCA2だけですべての遺伝性乳がん、卵巣がんが説明できるわけではありません。まだ解明されていないその他の(現在未知の)因子が存在すると考えられ、これらを明らかにする研究も進行中です。

BRCA1、BRCA2遺伝子検査の意義

あなた自身に対して

あなたが遺伝子検査を受けてBRCA1、BRCA2遺伝子に病的変異がわかった場合、温存手術後の乳房の再発、将来反対側の乳房にも乳がんが発生する可能性が高いので十分な注意が必要です。また、卵巣がんになる確率も高く(欧米の報告ではBRCA1に病的変異があると40%、BRCA2では20%)なると報告されています。

このリスクを軽減するための予防的対応が重要となります。例えば、早めに頻繁に継続的な検診を受けたり、ホルモン剤を予防的に服用したりします。欧米では予防的に乳房、卵巣を摘出するという手段をとる方もいます。また、あなたの今回の乳がんの手術方式についても十分に考慮して選択する必要があります。BRCA1、BRCA2遺伝子に病的変異を持った方にどのような方針で検査を行い、場合によっては予防方法を考えるかはケースバイケースです。担当医やカウンセラーと相談しながら決めていきましょう。

遺伝性乳がん、卵巣がんリスク軽減手段
遺伝性乳がん、卵巣がんリスク軽減手段

あなたの家族に対して

BRCA1とBRCA2遺伝子に病的変異が見つかった場合、あなたの親、兄弟姉妹、お子さんもこの遺伝子の病的変異を2分の1の確率(50%)で持つことになります。家族の方も検査を受ければBRCA1あるいはBRCA2遺伝子にあなたと同じ病的変異があるかどうかは診断することができます。

もし遺伝子の病的変異がわかった場合、「精神的重圧のため悩みはしないだろうか」あるいは「結婚、就職、保険契約などで不当な差別を受けはしないだろうか」などの心配や不安が生じることもあります。また、血縁者に検査を勧めるべきか、あるいは、何も知らせずに放っておくべきか悩まれることになるかもしれません。ご家族の方には、自分が将来乳がん、卵巣がんになりやすいかを知りたがる人もいるでしょうし、逆に、知りたくない人もいると思います。そのため、BRCA1、BRCA2遺伝子の検査を受けるかどうかをご検討いただく際には事前にご家族の方と十分ご相談ください。遺伝相談ではこのような不安や心配についても対応しています。

一人で悩まずに私たちにご相談を
遺伝診療センター 受診のご案内

当院の遺伝診療センターでは、乳がん患者さんに対して、ブレストセンターの担当医がカウンセラーの方とともに対応させていただいています。検査を受ける方のみでなく、検査をうけるか迷っている方、検査についてもっと知りたい方、遺伝性乳がん、卵巣がんについて心配されている方、もっと知りたい方、是非一度ご相談ください。

完全予約制

電話で遺伝診療センター受付までご連絡ください。

電話:03-5550-2412

月曜〜金曜9:00〜16:00

予約時にお名前、生年月日、住所、日中連絡先などをお伺いさせていただきます。

遺伝相談のながれ

  • 予約時間に遺伝診療センターにご来院ください。はじめに、担当看護師がお話を伺います。その後、医師から遺伝に関する説明をさせて頂きます。(ブレストセンターの医師が担当します)
  • 1時間くらいを予定しています。

会計

  • 遺伝診療センター受付で遺伝相談料をお支払いください。
    ※自費診療となります。(1回3,300円)
    遺伝学的検査(採血)も自費診療です。

★遺伝診療センターでは患者様のデータを集団の統計データとして学会などで発表させていただくことがあります(例:受診者数や症例数など)。個人が特定されるような情報を個人の許可なく公表することはありません。
ご了承くださいますようお願い申し上げます。

遺伝診療センター

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