聖路加国際病院

St Luke's International Hospital

形成外科

形成外科のお知らせ

  • 読み込み中

母斑-あざ-の治療

母斑(ぼはん)-あざ-とは 皮膚にある正常の皮膚色とは異なる斑点 通常は限局性で、表皮・色素細胞・脂腺・毛包などに種々の母斑が生じます。赤い母斑は血管が、青・茶・黒い母斑はメラニン色素が原因で、皮膚のどの場所に多くあるかで表面から見える色が変わります。
治療方法は、母斑の種類・大きさ・部位によって異なります。レーザー治療が主体となりますが、外科的処置が必要な場合もあり、よく相談をしてから治療を行います。

血管腫(赤あざ)

血管腫にはたくさんの種類がありますが、ここではご相談の多い
①乳児血管腫(苺状血管腫)
②毛細血管奇形(単純性血管腫)
③サーモンパッチ/ウンナ母斑
について説明をします。

① 乳児血管腫(苺状血管腫)

乳児血管腫(苺状血管腫)
おでこの乳児血管腫

生後数日から1か月ころから赤みが出てきて、徐々に盛り上がってきます。皮膚表面に扁平に盛り上がる「局面型」、半球状に盛り上がる「腫瘤型」、皮膚の下に腫瘤ががある「皮下型」の3タイプがあります。乳児血管腫は型と大きさにもよりますが、通常は4~7歳のころまでには自然に消退してきます。しかし、範囲が大きかったり大きな皮下型であった場合には、部分的に赤みが残ったり、色は消えてもいったん膨隆した皮膚が縮むので周囲の皮膚とは質感が異なることがあります。それらの予防として、比較的出始めで大きくなる前にレーザー治療を行い、大きくならないようにしてあげることで痕が残ることを予防することが出来ます。皮下型の場合や瞼に出来て視野障害を生じるものなどにはプロプラノロールの内服治療を行います。このお薬は元々が循環器系のお薬のため、副作用に注意する必要があるので小児科で入院管理をしながら治療をおこなっています。

② 毛細血管奇形(単純性血管腫)

毛細血管奇形(単純性血管腫)
体幹部の毛細血管奇形

生れた時から存在する平坦な赤あざです。自然に消退することはないので、レーザー治療の適応があります。出来るだけ早期に始めた方が効果は高く、当院では3ヶ月以降から照射をしています。効果は部位や範囲によってかなり異なります。顔面や頸部は7割程度の有効率があるとされていますが、四肢とくに下肢は効果が出にくい場所です。範囲や部位によって治療回数も異なります。

③ サーモンパッチ

サーモンパッチ
おでこのサーモンパッチ

まぶたの内側や額、鼻、上口唇などに出るうっすらと赤い盛り上がりのないもので、顔面の真中に出現することから正中母斑といわれることもあります。赤ちゃんの20~30%に見られるといわれています。成長して皮膚の毛細血管が減少すると、自然に消失することが多く2歳ころまでには目立たなくなってきます。額や鼻翼に出来ているものは残ることもあるので、1歳過ぎても色が濃い場合にはレーザー治療を行うことで薄くすることが出来ます。

青・茶・黒あざ

皮膚のどの場所に多くメラニン組織があるかで皮膚表面から見える色が変わります。

① 異所性蒙古斑(青あざ)

異所性蒙古斑

表皮より深い真皮のみにメラニン色素がある場合は青く見えます。隆起のない平らな青あざです。日本人の多くにはお尻にこの青あざがあり、蒙古斑と言われています。同じような色調でも、お尻以外にできたものは異所性蒙古斑と呼びます。非常に濃い色調のものや、手関節や足関節などの皮膚が薄く成人になるまでの皮膚の拡張率が少ない部位のものは色調が残りやすいので、早期からレーザー治療を行っています。皮膚の薄い幼少期の方が、レーザー効果が出やすいとされています。またこのような青あざが顔面のおでこ~目の周り~頬などの片側(時には両側)に出現することがあります。これは太田母斑といい黄色人種に多いと言われています。生後すぐにあることもありますが、思春期に出現したり濃くなったりすることが多いです。眼球以外の部分は積極的にレーザー治療を行います。

② 扁平母斑(茶あざ)

扁平母斑

メラニン色素が真皮でも表皮に近い真皮や表皮の基底層に沈着した場合は茶色に見えます。隆起のない平らな茶あざです。扁平母斑は赤ちゃんの10~20%にでると言われています。小さいものから非常に大きいものまであり、色調も薄い茶色から黒色に近い茶色のものもあります。治療はレーザー照射が基本になりますが、非常に再発がしやすい母斑です。特に四肢にできているものは毛が生えてしまったらほぼ100%再発をします。成長とともに紫外線の刺激などでも濃くなることが多いため、レーザー抵抗性で治療希望の場合には外科的切除を行うこともあります。

③ 色素性母斑

色素性母斑

メラニン色素を持った「母斑細胞」が表皮から真皮の深い部分に厚く層状に存在すると黒く見えます。隆起する場合もあります。基本的にはレーザー治療は効果はないため、治療希望の場合は外科的加療となりますが、大きさ・部位などにより治療方法はことなります。生まれつきの色素性母斑で5cm以上の大きさのものは悪性しやすいともいわれており、そのような場合には様々な方法を組み合わせて治療を行います。

レーザー治療は可能な限り外来で行っています。あざの種類や大きさによりですが、テープや塗り薬の麻酔を使用することもあります。当院では麻酔のリスクを考えて、全身麻酔は機能的な障害がない場合には3歳以降に行うこととしています。しかし、非常に大きな母斑で複数回の手術をしなければならない場合や、眼瞼や肛門近くの血管腫のように機能的に問題となる場合には、麻酔科の医師と相談しながら早期からの治療も行っております。

保険診療でレーザー治療が出来るのは、血管腫(乳児血管腫・毛細血管奇形・毛細血管拡張症)・異所性蒙古斑・太田母斑・扁平母斑・外傷性色素沈着症に対してです。基本的には黒子に対しての治療は自費診療となりますが、先天性で大きなものであり治療が必要な場合には保険で治療を行うこともあります。

あざ―母斑―の治療には様々な方法があります。治療には長期間かかる場合も多いため、担当医が治療方針や計画についてよくご説明させていただき治療を始めるようにいたします。

トップへ