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膀胱全摘術・尿路変向術
膀胱全摘術、尿路変向術に関して
筋層浸潤性膀胱がんで転移を認めない方に対する標準的治療法は膀胱全摘術です。また、内視鏡手術や膀胱内注入療法で抑制困難な表在性膀胱がん(上皮内がん)や、血尿のコントロールが困難な場合、薬物療法後の萎縮膀胱に対しても施行される場合があります。
その際、通常の排尿が出来なくなりますので、尿路変向術が必要となります。
膀胱全摘術の手術方法
膀胱全摘除術の方法としては、開腹手術、腹腔鏡手術、ロボット支援手術の3通りがあります。開腹手術は出血量や合併症が多く、傷も大きくなり、体への負担が大きい手術です。この開腹手術のデメリットを克服しようと腹腔鏡下膀胱全摘除術が開発されましたが手技の困難さや手術時間の大幅延長等あり、広く普及するに至っておりません。
腹腔鏡手術に代わるように手術用ロボット(da Vinci Surgical System)によるロボット支援膀胱全摘除術が2003年に初めて報告され、本邦でも2018年より保険適応となりました。ロボット支援手術は開腹手術と比し、術後の疼痛軽減、出血や合併症発症率の低下、入院期間の短縮、社旗復帰の早期化等のメリットがあり、当院でも主な手術法として積極的に施行しております。ロボット支援手術に関しては、当院では2011年より全国に先駆けて実施しており、十分な経験を積んでいます。
尿路変向術の種類
自排尿型
自然排尿型代用膀胱造設術
腸管を使って膀胱の代わりになる袋を作ります。そのために長く腸管を切り取る必要があり、体への負担も大きいですが、今まで通り自分で排尿する方法です。比較的年齢の若い方、十分な体力のある方、腎臓の機能が保たれている方に推奨されます。尿道を残す必要があり、尿道に癌が浸潤していないことが前提となります。
ストマ型
回腸導管造設術
回腸(小腸の終わりの部位)を20cm程切り取り、それを使って尿の通り道を作ります。切り口をわき腹に出し、ストマと言われる尿の出口を作ります。尿は腎臓から尿管を下り、回腸導管を通り、わき腹から体の外へ出ます。ストマに袋を貼り、尿はその袋に溜まります。小腸を切り取る長さがそれほど長くないので体への負担もそれほど大きくありません。歴史が長く、確立されている方法のため、最も普及しています。
尿管皮膚ろう
腎臓から尿を運ぶ尿管を、回腸を使わずに直接体の外に出し、尿の出口を作ります。
腸管を切り取らないので、体への負担が比較的少ないです。高齢の方や、合併症の多い方、消化管の術後で高度な腹腔内の癒着が認められる方に適応を考慮します。回腸導管と同様に袋を貼り、尿はその袋に溜まります。
尿路変向の手術方法に関して
ロボット支援膀胱全摘除術の際、尿路変向の手法として体腔内尿路変向術 (intracorporeal urinary diversion: ICUD)と体腔外尿路変向術 (extracorporeal urinary diversion: ECUD)があります。ICUDの利点として尿管剥離の範囲を短く出来るため尿管の虚血を予防でき、術後の尿管狭窄の頻度が低く、また肥満度の高い方でも無理なく手術が可能になりました。また腸管を外気に触れさせないため、腸管の浮腫を軽減し、術後腸管機能の早期回復の利点もあります。このような点を含めて当院では積極的にICUDを採用しております。
しかしながらECUDの利点として従来(ロボット支援手術導入前)の方法を踏襲でき、視野を広くして全体を視ながら手術を進められるということがあり、患者さんの状態のよってはECUDも考慮しております。