聖路加国際病院

St Luke's International Hospital

泌尿器科

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膀胱がん

概要

腎臓から作られた尿は、腎盂から尿管を伝って膀胱へ貯められ、尿道を通って排出されます。この通り道(尿路)は、尿路上皮という細胞で裏打ちされていますが、この細胞ががん化してしまったものを、尿路上皮がんといいます。

膀胱がんは、一般的には膀胱内に発生する尿路上皮がんのことを指します(扁平上皮がん、腺がん、肉腫など一部例外あり)。 人口10万人あたりの罹患率は18.4人(男性28.5人、女性8.7人)で、男性の方が女性よりも罹患率が高いです。年齢は、40歳代未満は少ないものの、以後男女ともに高齢になるにつれ徐々に増加する傾向があります。膀胱がんの最大のリスクは喫煙です。

自覚症状はないことが多いですが、最も多いのは血尿で、目で見て分かる場合(肉眼的血尿)と、検査で異常が見つかり分かる場合(顕微鏡的血尿)があります。その他頻尿、残尿感、排尿時痛などの膀胱炎のような症状で見つかることもあります。

診断

膀胱がんは、尿検査(尿細胞診)、超音波検査、膀胱鏡検査、CT/MRIなどによって診断を行います。尿細胞診では、尿に浮かんでいるがん細胞の有無を確認します。超音波検査は、膀胱腫瘍のスクリーニングとして用いられることが多いですが、診断精度はCTと比較するとやや劣ります。膀胱鏡では直接膀胱内を観察するので、最も診断精度が高く、腫瘍の位置や大きさ、数、性質などを観察します。

場合により、一部組織を採取し病理検査に提出することもあります(生検)。CTやMRI検査では、膀胱鏡検査だけでは確認できない腫瘍の深さや、膀胱より上流の尿路(腎盂〜尿管)の病変、リンパ節・遠隔臓器への転移がないかどうか(病期、ステージ)を確認します。 膀胱がんは、組織の病理検査でしか確定診断が出来ないので、尿細胞診や生検によっても確定診断に至らない場合は、後述の手術により診断を行います。

治療 (TUR-Bt〜BCG治療)

膀胱がんが疑われた場合、一般的にはまず内視鏡の手術を行います(経尿道的膀胱腫瘍切除術;TUR-Bt)。通常、当日または前日入院で手術を行います。全身麻酔または下半身麻酔を行った上で、ベッドで足を開いた姿勢となって頂きます。尿道口から手術用の内視鏡を挿入し、腫瘍を電気メスで切除します。場合により、病巣部以外の複数箇所から膀胱粘膜の組織を採取し、がんの広がりを確認することもあります(生検)。術後は血尿の確認のため、尿道にカテーテルが入った状態で病室に戻ります。通常の経過であれば、術後2日目にカテーテルを抜去し、3日目に退院が可能です。

既に膀胱がんの確定診断が付いている場合、または未確定ではあるものの術中所見から癌が強く疑われる場合は、手術翌日に再発予防の抗がん剤(テラルビシン)を尿道のカテーテルを介して膀胱内に注入します。おおよそ15分間程度、膀胱内に貯めておき、その後排出します。膀胱がんは再発しやすい傾向にありますが、これにより、術後の再発率が減少することが知られています。この治療により、抗がん剤でしばしば見られる脱毛や吐き気などの副作用はありませんが、頻尿や下腹部痛などの膀胱炎のような症状が起きることがあります。

初めてこの手術を受ける方の多くは、術前に膀胱がんの確定診断が付いておらず、診断と治療を同時に兼ねて行われる場合がほとんどです。このため、①実際に悪性であっても表在性であれば内視鏡手術のみで根治が目指せる場合もあること、②悪性であった場合、どのくらいの深さまで腫瘍の根があるのか(深達度)により、以後の治療方針が変わること、から、実際の腫瘍よりも正常粘膜に幅を持たせて少し広めに、また筋層の一部が見えるまで深めに切除を行います。膀胱の壁の厚みは尿が空っぽの状態で1cmほど、尿が溜まった状態で3mmほど、と元々薄い構造のため、結果として、腫瘍があった部分の膀胱の壁は非常に薄くなり、場合により小さな穴が空いてしまうこともあります。通常は、時間をかけて手術跡を残しながらも粘膜の厚みはある程度回復し、穴が空いた場合も経過観察で自然と閉じてしまうことが大半ですが、場合によりカテーテルの留置期間が長引いたり、穴が大きい場合はお腹にドレーンチューブを留置したりすることもあります。極めて稀ですが、更に損傷が大きい場合は開腹手術で修復することもあります。また、膀胱粘膜や腫瘍を切除しますので、術後に血尿が出る場合があります。その他、術後に一過性の発熱やカテーテル留置に伴う痛みが生じる場合があります。

病理の結果は1〜2週間程度で確定します。術後、手術により取り切れたと判断された場合は、経過観察となり、悪性度などに応じて3~12ヶ月毎の膀胱鏡検査で再発がないかどうかをフォローします。病理結果により、追加の治療が必要になる場合もあります。選択肢としては、追加の内視鏡手術 (2nd TUR-Bt)、BCG療法、膀胱全摘除術、抗がん剤治療、放射線治療などがあります。

BCG療法は、いわゆる結核のワクチンとして知られているBCG(ウシ由来の弱毒化した結核菌)を膀胱内に投与することで、膀胱がん(特に上皮内がん)に効果があるとされ、広く用いられています。免疫療法の一種で、強い炎症反応を起こすことによりがん細胞を破壊します。ガイドラインでは週に1回、6〜8回、場合によりその後も維持療法として3〜6月間隔で投与を行うことが推奨されていますが、正常な膀胱粘膜にも炎症を起こしてしまうことから、回数を経るうちに頻尿や排尿時痛、血尿などの膀胱炎様の症状のため中断せざるを得なくなる場合もあり、投与期間や投与間隔は副作用の程度と合わせて考慮します。また、弱毒化されているとは言え結核菌が尿路に入るため、ごく稀に尿路結核を起こすことがあります。

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