聖路加国際病院

St Luke's International Hospital

臨床工学科

臨床工学科

臨床工学科には現在36名の臨床工学技士が所属し、血液浄化療法業務を行う腎センターと、機器管理・手術室・心血管センターで診療支援を行う臨床工学室に分かれ患者さんに安全でより質の高い医療を提供するためにチーム医療の一員として多職種と協力し日々業務を行っております。

腎センター

概要

腎センターには17名の臨床工学技士が所属しており、各種血液浄化療法を医師、看護師と連携し実施しております。治療場所は主に腎センター血液透析室ですが、急性期・一般病棟でも実施しております。
他にも在宅血液透析患者の教育・機器管理、透析液の水質管理、そして血液浄化療法関連装置の保守管理にも携わっております。
また、多職種と協力し感染対策、医療安全対策、災害対策などの活動に参加し安全な血液浄化療法を提供できるようにスタッフ各自が日々業務に励んでおります。

各種業務紹介

透析室
  • 血液透析療法:腎センター血液透析室にて入院患者および外来維持透析患者の血液透析療法(HD、OHDF)を行っております。また病棟出張透析にも対応しており急性期病棟ではCHD、CHDF、CHFなどの持続緩徐式血液透析療法も実施しております。
  • 各種血液浄化療法:血漿交換療法(PE)、血液吸着療法(HA)、血漿吸着療法(PA)、顆粒球除去療法(GCAP)、腹水濃縮還元再静注療法(CART)などの各種治療に携わっております。
  • 在宅血液透析療法:患者教育および患者宅での装置点検などを行っております。また24時間体制で電話対応を実施しております。
  • 腹膜透析療法:PD外来、遠隔モニタリング、PD機器管理、PD導入期指導、在宅訪問を実施しております。
  • 水質管理:関連学会のガイドラインに則り透析用水・透析液のエンドトキシン、生菌検査を行い、水質管理を実施しております。
  • 装置の保守管理:日常点検・定期点検計画の策定および実施をしております。また消耗部品の交換、装置トラブル発生時の対応も行っております。

腎センター

臨床工学室

概要

臨床工学室には19名の臨床工学技士が所属しており、医療機器を適切に保守・管理することを目的として発足し、現在では
・医療機器管理業務
・手術室での機器管理、および立会いを行う手術室業務
心血管センターの一員として、
・人工心肺操作など心臓血管関連手術をサポートする体外循環業務
・虚血性心疾患の検査・治療をサポートするインターベンション業務
・カテーテルアブレーション治療で必要となる機器の操作を行うアブレーション業務
・心臓植込み型電気的デバイスの操作を行う不整脈デバイス業務
といった各分野の治療に携わっており、多職種と連携してチーム医療に貢献しております。

各種業務紹介

医療機器管理業務

医療機器管理業務

院内には多種多様な医療機器があり、臨床工学室では約4000台の機器を管理しております。これらを適切に保守・管理することを目的として、各種医療機器の点検整備、修理を受け持っております。

日常業務では輸液ポンプ、シリンジポンプ、酸素流量計等の使用後の点検整備や、毎月約100台の定期点検、および棟で動作不良等が起こった際のトラブル対応を行い、日々安全に医療機器が使用できるように管理しております。

また、人工呼吸器の使用中・使用後点検、回路交換や病棟移動前後のセットアップを行うと共に、ケアサポートチームによるラウンドにも毎週参加してチーム医療に貢献しております。

なお、夜間帯でも1名のスタッフが院内に常駐しており、人工呼吸器の点検や、夜間に使用を開始する患者への呼吸器取り付けの立ち合い、日中点検が難しい機器の定期点検、ロボット手術支援装置のセットアップ、一部の手術室の始業前点検等を行っております。  また、緊急対応として心臓カテーテル業務、IABP(大動脈内バルーンパンピング)・経皮的心肺補助装置の導入や管理、心臓血管外科症例の一次対応も行っており、日勤と夜勤で臨床工学技士が24時間365日対応できる体制を構築しております。

その他、睡眠時無呼吸症候群で使用する持続陽圧装置や、在宅酸素療法、在宅人工呼吸器といった在宅医療機器の管理にも臨床工学技士が携わっており、特に導入の際には医療機器の専門家である臨床工学技士が窓口となって取扱い説明をすることで患者さんが安心してご自宅で使用できるようにサポートしております。

手術室業務

手術室業務

当院手術室では年間約10000件の手術が行われており、多種多様で高度な医療機器が配置されております。それらの医療機器を適切に保守・管理することを目的として、2009年より臨床工学技士の手術室常駐業務を開始しました。

主な業務内容として、始業前・手術間の機器点検、週・月毎で定期的に行う機器点検、特殊手術装置(内視鏡装置、手術用顕微鏡、ロボット手術装置、ナビゲーションシステムなど)を使用する手術の立ち会い、医療機器関連トラブルへの対応や故障時修理などがあり、通常2名の臨床工学技士がこれらの業務にあたっております。

中でも特殊手術装置はより高度な機器であり、これらの機器を円滑に運用するためには、医療機器の専門家である臨床工学技士が日常点検を行い、手術に立ち会うことなどが重要となっております。

また、看護師向け勉強会の開催や機器操作方法の説明動画の作成など、手術室スタッフへの知識の共有やスキルの維持・向上のための活動も積極的に行っております。

体外循環業務

体外循環業務

心臓血管関連手術においては心臓を一時的に止めて行う手術が多くあります。心臓を止めると血液の循環が止まり、酸素が全身に送られない状態が続くとわずか数分で心臓や脳に不可逆的なダメージを負ってしまいます。そこで、手術時に心臓や肺の代わりとして必要不可欠となる人工心肺装置の操作、管理業務を臨床工学技士が行っております。手術時はスタッフ2名で対応しており、365日2名のオンコール体制で定例手術の他に年間75件(2017年実績)の緊急手術を行っております。

救急領域・急性期領域ではIABP(大動脈内バルーンパンピング)やV-V ECMO(静脈-静脈体外式膜型人工肺)、V-A ECMO(静脈-動脈体外式膜型人工肺))用いた治療を行っております。ECMO症例は非常に緊急性が高く、他の症例よりも更に迅速なセットアップが必要となるため、オンコールスタッフが病院に到着までの間、夜勤常駐スタッフもセットアップを行います。全スタッフが高いレベルのスキルを維持する必要があるため、定期的なトレーニングを実施しております。

体外循環技術認定士を擁し、教育体制としてはマニュアルや動画勉強会を作成し人材育成の強化も行っております。

心血管センター

滅菌室業務

当院では滅菌器機の安全性向上を目的として、2019年から滅菌室業務を実施しております。滅菌器機の不具合や破損による手術時間延長を無くすために、毎日1名が滅菌室に入り、内視鏡関連、ラパロ鉗子関連、エナジーデバイス関連、電気メスのコード類など、毎月2500件前後の滅菌前点検を実施しております。CEが滅菌前点検に介入することで、滅菌器機の安全性が向上しております。

インターベンション業務

インターベンション業務

循環器内科虚血領域を担当する臨床工学技士は、心血管センター内にある、心臓カテーテル室で業務を行っております。ここでは、虚血性心疾患や末梢血管疾患の検査・治療を行っており、そのすべての症例に臨床工学技士が携わっております。

臨床工学技士の業務は、使用する物品の管理・術野への提供、検査や治療に必要な機器の操作です。術中の患者の生体情報を監視するポリグラフをはじめ、冠動脈の狭窄の度合を測定するFFR(冠血流予備量比)、血管内部の情報を解析するIVUS(血管内超音波)、OCT(光干渉断層法)、血管内にできてしまった石灰化部分を切除するロータブレータ―などの機器を操作しております。

緊急時に補助循環として使用する、IABP(大動脈内バルーンパンピング)、PCPS(経皮的心肺補助装置)など、治療成績に大きな影響を与える様々な機器を操作する臨床工学技士の役割は、ハートチームの一員として責任あるものとなっております。

当院ではITE(心血管インターベンション技師制度)の資格を持つスタッフも在籍しており、教育体制を充実させることで、スタッフ全員の知識と技術の向上に努めております。

また2013年12月より開始した、TAVI(経カテーテル的大動脈弁植込術)では、全国でも先駆けて、大動脈弁の組立てを臨床工学技士が習得し、清潔操作を行い、現在も手技に携わっております。
医療機器の操作で必要な工学的知識だけでなく、様々な種類の物品の特徴を理解した医学的知識を兼ね備え、カテーテル手技が安全・円滑に遂行するようサポートしております。

虚血系心疾患とは

末梢動脈疾患とは

TAVI(経カテーテル的大動脈弁植込術)とは

アブレーション業務

アブレーション業務

心臓は刺激伝導系と呼ばれる電気の通り道を規則正しく電気が流れることによって拍動し、全身に血液を送り出します。この電気の流れが乱れ、正常に心臓が動かなくなってしまうことを不整脈と呼び、カテーテルアブレーションとは、専用のカテーテルで不整脈の原因である異常部位を焼灼する根治治療です。

カテーテルアブレーションではバイタルサインの管理や心臓の電気情報を解析するポリグラフ、焼灼に必要な高周波電流を発生させるアブレータ、心臓に電気信号を流すカーディアックスティムレータ、心臓の電気の流れを立体的に把握できる3Dマッピングシステムといった数多くの医療機器が使用されます。

臨床工学技士の主な業務はこれら治療に不可欠な医療機器を医師の手技に合わせて操作する治療のサポートであり、2010年より業務を開始し、現在では年間約200例に及ぶ全ての症例に立ち会っております。特にポリグラフや3Dマッピングシステムの操作は焼灼部位の特定に非常に重要であり、手術時間の短縮や放射線被爆量を軽減させ、患者さんへより安全な治療を提供することに繋がります。

また、当院では冷凍(クライオバルーン)や高周波ホットバルーンカテーテルアブレーションといった機器を積極的に導入しております。治療結果に直結する立場としての責任をもって、日々進歩する医療機器の操作に従事しております。

不整脈とは

不整脈デバイス業務

不整脈デバイス業務

徐脈性不整脈と呼ばれる脈が遅い心臓の補助を行う植込み型ペースメーカや、生命に危険を及ぼす不整脈の検知・治療を行う植込み型除細動器のように不整脈治療を目的とした医療機器のことを心臓植込み型電気的デバイス(Cardiac Implantable Electronic Devices,CIEDs)と呼びます。

CIEDsの設定のプログラミングやデータチェックには専門知識が必要となることから、当院では2010年より医療機器の専門家である臨床工学技士による不整脈デバイス業務を開始しました。現在では毎年約100例のCIEDsの手術に立ち会い、CIEDsの操作の他、使用する物品の管理・術野への提供など手術が円滑に進むようサポートしております。

また、CIEDsは手術後も定期的な経過観察が必須となります。当院では年間約1,500件のフォローアップを行い、患者さん1人1人がより良い生活を送れるような設定のプログラミングを目指しております。

なお、当院では不整脈治療専門臨床工学技士やIBHRE(International Board of Heart Rhythm Examiners)検定試験に合格した、より専門性の高い知識を習得した技士も在籍しており、教育に携わることで人材育成に力を入れております。

新人教育

当院ではプリセプター制度を導入しております。業務毎に新人教育用のカリキュラム、及びマニュアルが完備されており初めのうちは先輩スタッフと一緒に行い、カリキュラムの進捗状況に応じて随時見守りで教育を行っていきます。また、定期的に新人とプリセプター、更には上席技士とで振り返りの会を設けており、日々の業務に対する不安や疑問を解消できるような環境作りに努めております。

院外活動

臨床工学科では患者へ安全でより質の高い医療を提供するために、専門知識の習得・技術レベルの向上を目的として、各種学会が認定する資格を積極的に取得しております。

専門認定

臨床ME専門認定士
透析技術認定士
血液浄化専門臨床工学技士
日本急性血液浄化学会認定指導者
3学会合同呼吸療法認定士
体外循環技術認定士
不整脈治療専門臨床工学技士
心血管インターベンション技師(ITE)
IBHRE(International Board of Heart Rhythm Examiners)検定試験合格

所属・参加学会

日本臨床工学技士会
日本体外循環技術医学会(JaSECT)
日本人工臓器学会
日本心血管インターベンション治療学会(CVIT)
日本不整脈心電学会(JHRS)
日本透析医学会
日本急性血液浄化学会
日本腹膜透析医学会

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