聖路加国際病院

St Luke's International Hospital

心血管センター(循環器内科・心臓血管外科)

不整脈とは

不整脈

不整脈疾患は心臓の病気のうちでも最も頻度の高いものであり、正常の心拍が(時に)保てなくなる状態をいいます。不整脈には大きく分けて2種類で、脈拍が早くなる頻脈性不整脈(目安:1分間に100回以上)と、遅くなる徐脈性不整脈(目安:1分間に50回以下)があります。

頻脈性不整脈

正常より有意に早い心拍を形成する不整脈です。

  • 発作性上室性頻拍(PSVT)
    心臓の拍動を行なわせる神経からの電気信号の伝播に異常があるために起こる不整脈です。心房と心室を結ぶ連絡路である房室結節の他に余計な通り道があり、両者の間で信号がぐるぐる旋回してしまい頻脈になります。突然始まり、突然終わる動悸発作として自覚することが多いです。
  • 心房細動(AF)・心房粗動(AFL)
    心房が小刻みに震えてしまい、脈拍が不規則かつ速くなる不整脈です。近年の高齢化とともに増加傾向にある不整脈で、動悸・息切れが時に強く出ます。実は、心臓の中にできてしまう血栓(血の塊)による脳梗塞が最大の問題となります。
  • 心室頻拍(VT)・心室細動(VF)
    心室が非常に早い頻度で空打ちしてしまう不整脈で、心臓に何らかの病気が隠れている場合が多いです。時に命に関わる危険な不整脈であるため、専門医の適切な治療が必要となります。

徐脈性不整脈

程度が軽く、心機能も良好であれば放置しておいてもよい場合が多いですが、極端に遅い脈になると心機能に影響して心不全のもととなったり、心拍出量が低下して易疲労感や倦怠感、集中力低下をおこします。

  • 洞不全症候群(SSS)
    刺激伝導系の開始点である洞結節の働きが悪くなる不整脈であり、突然、数秒以上心臓が止まったりします。一般に予後の良い不整脈ですが、症状(失神・めまい・息切れ)が強い場合は治療の対象となります。
  • 房室ブロック(AV block)
    刺激伝導系の中間地点にある房室結節の連絡が途絶えてしまう、もしくは不十分な不整脈です。症状(失神・めまい・息切れ)がある場合はもちろんですが、無症状でも治療の対象となることがあります。

トップへ

当院で行える治療法

内科的治療

頻脈性不整脈に対する薬物治療

頻脈性不整脈に対し、抗不整脈薬を投与して、不整脈そのものを出にくくしたり、脈拍を適切な範囲にコントロールしたりします。

カテーテルアブレーション(カテーテル心筋焼灼術)

頻脈性不整脈の多くは、心臓の中にある異常な興奮の発火や回路が原因となっているため、カテーテルと呼ばれる細い管を血管や心臓の中に挿入し、それらを焼灼(ヤケドを作る)することで治すことが期待できます。薬物治療と違い「根治」となり得るため、不整脈自体がなくなることが期待できます。手術ではないため体への負担も軽く、数日の短期入院で治療は完了します。

アブレーション

ペースメーカ

徐脈性不整脈に対し、ペースメーカ本体を胸の皮膚と筋肉の間に植込み、リードと呼ばれる電線を1本あるいは2本、血管に沿って心臓の中に留置し、遅くなった心臓の歩調取りをしてあげる治療です。ペースメーカは年々小型化しており、外から見ても目立たなくなってきています。日常生活での制限も問題にならない場合がほとんどです。手術は局所麻酔で済む簡単なもので、数日間の入院で行うことができます(当院では2泊3日入院で手術を行っています)。

ペースメーカー1

ペースメーカー2

植込み型除細動器(ICD)

ICD

植込み型除細動器(ICD)

心室頻拍や心室細動などの致死性不整脈から突然死を予防する機械です。ペースメーカ同様、前胸部にICD本体を植込み、致死性不整脈が発生した場合は、AED(自動式体外除細動器)のように自動的に電気ショックを落として不整脈を停止させます。ICDは自動車の保険のようなもので、事故(=不整脈)を減らすわけではありませんが、事故の際には被害を補償(=突然死を予防)してくれます。現在、致死性不整脈から突然死を回避する手段として、ICDは最も確実なものとみなされています。

両室ペースメーカ(CRT-P)・両室ペーシング機能付き植込み型除細動器(CRT-D)

CRT-D

重症心不全に対し、薬物によってもコントロールがつかず、心室が「非同期」と呼ばれるゆがんだ動きをしている重症心不全では、CRT-Pを植え込むことで非同期を改善し、心不全を改善させることができます。従来のペースメーカに加え、心臓の横側にもリードを留置し、左心室を両側から挟み打ちして心臓を同期のとれた動きにする治療法です。重症心不全では致死性不整脈を合併することも多いため、両室ペースメーカ(CRT-P)に植込み型除細動器(ICD)機能も付けた両室ペーシング機能付き植込み型除細動器(CRT-D)と呼ばれる機械も実用化されています。

外科的治療

不整脈に関する>外科的 (開胸し心臓に直接処置を行う) 治療が行われるのは、カテーテル的治療によって症状が十分にコントロールできない場合です。昨今のカテ-テルアブレーション技術の進歩や植込み型機器の洗練、薬剤治療との組合せによって、単独不整脈疾患で開胸手術を要することはきわめて稀になりました。むしろ、心臓手術を要する他の疾患があり、その疾患に頻脈性不整脈が併発している場合に、原疾患に対する外科治療とあわせて不整脈源性部の治療が行われる事が多いのです。

Maze(メイズ)手術(心房細動根治術)

Maze手術

心房に特定の、やや複雑な切開線もしくは凍結凝固(あるいは高周波通電凝固) を加えて心房細動を止めて規則性の正常調律を復活させる治療です。慢性心房細動の70〜80%はこの方法により規則性心拍に復帰します。

心房に特定の、やや複雑な切開線ないし凍結凝固(あるいは高周波通電凝固) を加えて心房細動(心房内の無秩序な微細電流の渦) を止めて規則性の正常調律を復活させる外科治療です。慢性心房細動の70〜80%は同法により規則性心拍に復帰します。

心臓手術を要する疾患でもっとも併発率が高いのは心房細動です。心房性頻脈性不整脈ですので心機能に影響を及ぼすようなたちの悪い不整脈ではありませんが、心臓手術を要する患者さんに心房細動がある場合は、積極的にこれを根治する為に手術が行われます (図1) 。

トップへ

当院での特徴

内科と外科の密な連携、看護師や技師とのチームワークが心血管センター全体でとれているため、外来から入院、更に退院後の外来においても、不整脈の治療だけで終わらない心臓のトータルケアを行うことができます。
例えば、循環器内科の不整脈治療チームによってペースメーカ植込み術やカテーテルアブレーションを実施し、これらの治療の不効例や、併存で開心術を要する頻脈性不整脈疾患に対しては積極的に不整脈根治の開心術を心臓血管外科が実施しています。心房粗細動に対しても、単独の不整脈であれば内科でカテ-テルアブレーションを、要開心術疾患であれば外科で心房細動根治術を積極的に実施しています。

トップへ

心血管センターのお知らせ

  • 読み込み中