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診療内容
ご挨拶
聖路加国際病院のリウマチ膠原病センターでは、全身性自己免疫疾患である膠原病、関節リウマチの診療を行っています。実際に患者さんの病状を改善し、できる限り通常の日常生活を送っていただくことを目標に、それぞれの患者さんにあった治療の選択肢をご相談させていただきます。
最善の治療を行うには、最新の医学知識のみでなく実際の臨床経験が重要となります。当センターは、全国の大学病院出身の医師が集まっており、また米国のリウマチ膠原病専門医が2人フルタイムで働いている日本で唯一の施設です。年齢を問わず診療ができるように、リウマチ膠原病内科医と小児リウマチ専門医が同じセンターの中で共同で治療にあたるシステムもとっています。欧州、米国、日本での診療経験に基づき、それぞれの長所を活かした診療を行いながら、常に最新の知識に基づいた診断と治療を実践しています。
全国の若手リウマチ膠原病科医を対象とした教育セミナーも数多く開催し、効率的な診断法、多くの治療の選択肢、関節エコーや関節注射の手技など、本当の意味で専門医としてリウマチ膠原病の診療ができる医師の育成に力を入れています。
現在は5つの外来診察室を午前午後に使用し診療しております。初診は平日のみですが、病状の進行が心配な場合などは予約を早めるなどの対応も行います。また、慢性疾患であり紹介状の依頼が困難などの場合は、紹介状なしでの受診も例外的に受け付けています。
リウマチ膠原病センター長 岡田 正人
診療内容・特徴
全身性エリテマトーデス(SLE)を中心とする難病指定疾患である膠原病、関節リウマチなどの関節炎疾患、小児リウマチをはじめとする小児膠原病を中心に診療しています。
全身性エリテマトーデス(SLE) ループス腎炎
若い女性が発症することの多い膠原病です。10代から30代の女性で原因不明の発熱がつづく、関節炎、日光過敏や脱毛を伴う皮疹などから診断が疑われます。
以前は長い入院、ステロイドの長期的な副作用、就労・妊娠における制限などいわゆる難病と呼ばれる疾患の代表的なものでした。しかしながら、現在では診断技術の向上による早期診断により早期治療が可能になり、当院での平均入院期間はループス腎炎の治療でも2週間ほどです。退院後も通院は必要ですが、患者さんの日常生活をできるだけ保てるように、また短期的効果だけでなく長期的な副作用を避ける治療を心がけています。
名前の通り、全身性に症状がおこる疾患ですが、どの症状も見逃さないように注意深く診療をさせていただきます。普通に受験して、就職して、結婚して、出産して、旅行などの余暇も楽しめる生活を目標にします。
関節リウマチ
手指や足の裏の趾の付け根の関節の痛みや腫脹から始まることの多い関節炎で、20代から50代の女性に多く見られます。診断と治療の進歩により、症状が出てから3カ月以内に受診していただければ、早期に症状の改善が得られ長期的にも進行を予防できることが大変多くなりました。日常生活を痛みで制限したり、外から見て明らかに関節が腫れていると気づかれることがないように治療することが目標になります。妊娠や出産の予定、肺や腎臓の合併症など患者さんごとの状況に合わせた治療をご相談し、治療効果の判定や薬の副作用のモニタリングなども注意深く行います。受診の利便性などもご相談し、ご希望により整形外科の開業医の先生方とも連携診療を行います。
1990年後半から生物学的製剤の登場により関節リウマチの治療は骨びらん・関節変形を起こさないように治療する「骨びらんの無い時代non-erosive era」とも言われ大きく進歩しています。また経口リウマチ薬をうまく組み合わせて生物学的製剤とほぼ同等の効果を期待できる場合もあります。相談しながら患者さんごとの病状や状況にあった治療を選択していきましょう。
脊椎関節炎(乾癬性関節炎)
強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、反応性関節炎(消化管や泌尿器系の感染症への免疫反応に関連)、炎症性腸炎関連関節炎(クローン病や潰瘍性大腸炎関連)などに代表される脊椎関節炎では、比較的若い方に発症する朝のこわばりを伴う腰痛などが特徴的ですが、頚椎などの症状、関節リウマチのような手や足の関節炎も見られます。以前は欧米と比較すると少ない疾患と考えられてきましたが、MRIなどの診断技術の向上で日本でも早期に診断されることが多くなりました。経口薬や生物学的製剤を含めた治療の確立によって、早期の症状の改善と長期的にも進行を抑えることが可能となり、飛躍的に治療が進歩した疾患です。必要に応じて理学療法、整形外科や皮膚科とも連携し、患者さんの病状に合わせた治療法をご相談させていただきます。
妊娠出産サポート
当院ではリウマチ膠原病疾患をもつ女性が、安心して妊娠出産を迎えるためのサポート外来を行っています。
当院では、患者さんとの相談の上、上記のような妊娠前から計画的に、妊娠時にも使用可能な薬剤による積極的な疾患コントロールを行っています。女性医師が中心となり、妊娠前(プレコンセプション)、妊娠中、産後、授乳期を通じて患者さんに寄り添った診療を行っていきます。
当院ではリウマチ膠原病疾患をもつ女性が、安心して妊娠出産を迎えるためのサポート外来を行っています。
リウマチ膠原病疾患がある女性では、疾患のコントロールが優先となり、通常治療を先行させることも多く、妊娠出産の時期がより高齢となる傾向があります。
当院では、患者さんとの相談の上、妊娠前から計画的に、妊娠時にも使用可能な薬剤による積極的な疾患コントロールを行っています。妊娠出産をより安全なものにしたい、患者さんの希望のファミリープランに近づけたいとの考えで、妊娠出産経験のある女性医師が中心となり、妊娠前(プレコンセプション)、妊娠中、産後、授乳期を通じて患者さんに寄り添った診療を行っていきます。
チームには小児リウマチ医もおり、思春期からのサポートも行います。また、当院女性総合診療部産婦人科医との連携により、きめ細やかな妊婦健診を受けることも可能です。女性総合診療部とは定期的なカンファレンスも行い、当院でお産に臨む患者さんの状況について相談しながら進めて参ります。妊娠前に、妊娠出産に関するリスクに関して産婦人科医に相談することも可能です。
出産施設自体は、当院の女性総合診療部だけでなく、患者さんの希望された施設との連携が可能です。また、妊娠判明時からの通院やセカンドオピニオンもお受けしております。
当ホームページでは今後、リウマチ膠原病疾患と妊娠出産に関する情報を発信していきます。
血管炎
血管炎とは血液の通り道である血管に炎症が起きる病気のことです。血管がつぶれることによって虚血性の症状(腹痛、皮膚壊死、神経麻痺など)が起きたり、血管が破れることで出血の症状(喀血、紫斑、血尿など)が出てきたりします。影響を受ける血管の大きさによって症状は様々で、大血管だと高安動脈炎(大動脈炎症候群)や巨細胞性動脈炎といった疾患、中型の血管だと結節性多発動脈炎(PAN)、小型の血管炎だとANCA関連血管炎、IgA血管炎(ヘノッホ・シェーンライン紫斑病)、クリオグロブリン血管炎などがあります。病気によっては、急速に不可逆的な臓器障害が起きてくることもあり、診断をしっかりと早期に確定し治療を早期に開始することが重要となってきます。また、再発をしたときにも早期に必要な検査を行い、早期に治療することが重要になります。聖路加病院の患者さん中心の診療と検査体制が最善の治療を行うことが可能にしております。それぞれの患者さんの疾患、またそれぞれの症状にあった薬剤を使用して最善の治療を行います。
この度、リウマチ膠原病センターに血管炎外来が新たに設立されることになりました。2017年9月より、血管炎の専門的なトレーニングを受けた田巻弘道医師の着任いたしました。田巻医師は Cleveland Clinic でリウマチ膠原病の2年の専門研修を終えたのちに、世界的に有名な血管炎センターである Cleveland Clinic Center for Vasculitis Care and Research で血管炎に特化した2年間の専門研修を終え、数百例にもぼる様々な血管炎の症例を経験しました。他のリウマチ性疾患と同様に、血管炎に対する治療法にも進歩しています。昔は、致死的な疾患でありましたが、現在では血管炎と共に充実した人生を歩んでいくことが可能となっています。血管炎との付き合いは長期的なものになることが多いので、経験豊富な医師のもと長くうまく付き合っていく方法をともに模索していくことが大切です。
全身性硬化症と肺高血圧症
全身性硬化症は、膠原病の中でもまだまだ治療の難しい疾患です。しかし、患者さんごとに慎重に診療をさせていただき、必要なときに早期に治療を計画することで病状の改善が期待できます。以前は進行性全身性硬化症と呼ばれていましたが、進行を食い止めることもできることが多くなり、いまでは単に全身性硬化症と診断名が変わりました。全身性強皮症とも呼ばれています。また、肺高血圧症はとても重要な合併症ですが、当院の特徴である科の枠を超えた連携診療を、循環器内科、呼吸器内科の専門医と行うことで先端的な治療を行います。
ベーチェット病
ベーチェット病とは、口腔、外陰部、皮膚、眼を主に障害する自己免疫/自己炎症疾患です。特定疾患医療受給者数は18,451人ですが、診断されていない患者さんがまだまだ数多くいらっしゃる可能性があります。症状として、ほとんど全ての患者さんで繰り返す口内炎が認められます。典型的には深く境界明瞭な口内炎を年に3回以上の頻度で繰り返し、時には多発することもあります。また口腔内以外に外陰部にも有痛性の潰瘍が出現することがあります。このような粘膜症状の他に、血管の炎症を伴う点もベーチェット病に特徴的であり、その代表がぶどう膜炎(眼球周囲血管の炎症)です。ぶどう膜炎によって発作的に視力低下・物がぼやけて見える、などの症状が出現することがあります。単一の検査ではベーチェット病を診断することができないため、診察・検査所見を組み合わせる必要があり、診断が難しいことも稀ではありません。適切に診断がつけば、コルヒチン、副腎皮質ステロイド、生物学的製剤などの治療によって改善が見込めますので、症状に心当たりのある方はお早目に受診してください。
小児リウマチ、膠原病
小児リウマチ膠原病疾患を専門的に診療できる施設は日本でも数が限られています。これは、まれな疾患であり一つの施設で十分な数の患者さんを効率的に診療できる体制が作りにくいからとも言われています。当センターでは、小児リウマチ患者と成人患者の両方を同じ科で診療しています。学校生活に影響をできるだけ与えないように、夕方の外来も行っています。また、治療の選択においては、疾患自体の治療だけでなく、成長や発達、長期的な副作用なども考慮し慎重に計画を立てて患者さんやご家族とご相談します。海外の学会などの最新の情報も積極的に取り入れ、常に最良の治療ができる体制を整えています。
小児の関節所見の取り方(詳細PDFファイル)
リウマチ膠原病と漢方
膠原病やリウマチの治療は、この数十年でとても進歩しました。しかし、その治療の多くが、様々な細菌やウィルスからからだを守ってくれる働き(免疫)を抑えることになるので、治療が強すぎると感染症になりやすくなり、さりとて、治療が弱すぎるのでは膠原病を治すことができません。
そこで、関節の痛みや全身の炎症といった、免疫が引き起こす病気の、最も中核の部分から少し離れて、月経不順や冷え症、食欲不振やだるさ、うつや不眠といった、一見「膠原病と関係があるの?」という症状を丁寧にケアして、からだ全体の具合を少しでも良いものにしていくと、病気は自から良くなっていくのではないか…というのが、漢方の考え方です。
現代医学の力で免疫の暴走を抑えて、それでもなお行き届かないところを、漢方が穏やかに下支えをする―漢方はいわば“自己治癒力”を引き出すことを狙いとした、究極の「支持療法」です。
私たちは二つの医学の良いところを取り入れて、より良い治療を目指します。
関節超音波
関節超音波検査は、レントゲン写真でみられる骨破壊が起こる前に、関節リウマチの病態の中心である滑膜や関節周囲の微細な血流まで見るでき、関節リウマチの早期診断や病勢評価に特に有用であると考えられています。また診察や単純レントゲン写真と合わせて用いることで関節リウマチに似た他の関節炎や関節痛(痛風・偽痛風・変形性関節症・腱鞘炎など)を適切に見分けることも可能です。当センターでは、日常診療に役立てるために担当スタッフが必要に応じて外来診察室で検査を適宜行います。非侵襲的で被曝の心配もありませんので、関節に症状が有る方は、ぜひお気軽に検査を受けてみて下さい。
対象症例・得意分野・専門分野
- 全身性エリテマトーデスおよびループス腎炎
- 関節リウマチ
- 乾癬性関節炎
- 強直性脊椎炎
- 皮膚筋炎・多発性筋炎および間質性肺炎
- 全身性硬化症および肺高血圧症
- 混合性結合組織疾患
- べーチェット病
- 血管炎(高安病、結節性多発動脈炎、顕微鏡的多発血管炎、ウェゲナー肉芽腫症)
- 若年性特発性関節炎(小児リウマチ)
- 小児膠原病
外来スケジュール表
医師名/曜日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 |
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岡田 正人 | ◯ | ◯ | ◯ | ||
山口 賢一 | △ | △ | |||
田巻 弘道 | ◯ | ◯ | ◯ | ||
大原 由利 | ▲ | ||||
池田 行彦 | ◯ | ◯ | ◯ | ||
柳岡 治先 | ◯ | ◯ | ◯ | ||
小澤 廣記 | ▲ | ▲ | ◯ | ||
川合 聡史 | ◯ | PM | ◯ | ||
中井 健宏 | ◯ | ▲ | |||
岩田 太志 | ◯ | ◯ | |||
浅野 貴大 | ◯ | ◯ |
△:小児アレルギー・リウマチ・膠原病
▲:妊娠出産サポート外来
スタッフの詳細情報は名前をクリックしてください。
メディア掲載情報
メディア掲載情報
- 日付 メディア・タイトル・概要 氏名
関連著書
漢方水先案内: 医学の東へ (シリーズケアをひらく)
津田 篤太郎 (著)
医学書院 2015年2月16日
どんなときでも「アクションが起こせる」医療者になるための知的ガイド。
(045)病名がつかない「からだの不調」とどうつき合うか
津田 篤太郎 (著)
ポプラ社 2014年11月14日
体が重い、なんとなくだるいなど、多くの人が抱えるぼんやりとした具合の悪さ。生活に支障をきたすほどではないけれど、日々元気に生活できているかというと、そうとは言えない。こうした体調不良は、病院に行っても原因が特定できず、病名もつかないことが多い。それはなぜなのか?その状態とどう向き合っていけばいいのか?そんな疑問、悩みに応えてくれる一冊!
未来の漢方 ユニバースとコスモスの医学
津田篤太郎×森まゆみ (著)
亜紀書房 2013年7月26日
漢方では人の体をどのように診るのか。マスを治すのに長ける西洋医学に対して、総合治療である漢方の再発見とこれから―。聞き書きの名手森まゆみさんが、NHKドクターG出演の津田医師に聞く。
関節リウマチの診かた、考え方
岡田正人、岸本暢将
中外医学社 2011年5月
関節リウマチのエキスパートたちが、グローバルスタンダードな診療の達成を目指してまとめ上げた渾身の力作。専門医から、若手医師やプライマリケア医に役立つ決定版。